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ヴィッセル神戸も、Jリーグも、そしてサッカーも。この素晴らしいスポーツ文化を100年後まで楽しむために、いま気候アクションに取り組んでいく【3/3】

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Jリーグの「スポーツ・ポジティブ・リーグ(以下SPL)」参画表明をきっかけに、気候アクションへの理解を深めようと企画した座談会も今回で完結編。クラブやスポンサー企業、ファン・サポーターといったそれぞれのステークホルダーにとっての"もっといい未来"とはどのようなものなのか。海外の事例やそれぞれの視点をもとに、これからの理想的なパートナーシップについて語り合った。

左からRECOTECH 大村拓輝さん、ヴィッセル神戸施設管理部部長 古賀圭紀さん、Jリーグ執行役員(サステナビリティ担当)辻井隆行さん。

――ヴィッセル神戸のスタッフとして、スタジアムの施設管理など現場レベルでの課題解決にあたられている古賀さんに質問です。SPL参画によってこれまで以上に気候アクションを推進していくにあたり、パートナー企業との連携もより重要になっていくのではと思います。その点はどのように考えられていますか?

古賀「まず、気候アクションについて僕たちクラブが何か特別なノウハウや技術を持っているわけではありません。その一方で、それらを持ちながらも“社会に広く知ってもらう”というところで課題を抱えられている企業も少なくないと思います。そうした方々にヴィッセル神戸という媒体をうまく使っていただき、たとえば試合時の廃棄物を減らすような取り組みといった、双方の課題解決につなげられる連携を強めていきたいですね」

大村「そういった課題解決につながる連携の事例として、リヴァプールFCとパートナーシップを結んでいる、あるメーカーのお話を挙げさせてください。彼らは再生資源を使用した製品の製造を行っていて、資源確保の点に課題を持っていました。そこでリヴァプールFCとともに『クラブが排出するごみを◯%減らす』といった共通目標を立て、廃棄ボトルの回収キャンペーンを実施したんです。こうした実践的なパートナーシップこそ、これからのスタンダードになっていくはずです。

その一方で、ひとつの企業の中でもスポーツ連携を担当する部門とそれ以外の部門で目的意識に温度差があるのも現実です。部門間の垣根を超えて連携できるような構造的変化が企業側にも求められているように感じます」

辻井「同感ですね。そのためにも、Jリーグや所属クラブが『こういった社会課題をいっしょに解決していきましょう』と、問いやテーマを明確に示すことが大事なんです。そうすることが企業側のマーケティング、営業、環境部といった多部門を有機的につなぐ触媒になり得ると考えています。

気候アクションに限らず世の中の多くの課題は、然るべき人同士がちゃんと出会いさえすれば、案外すんなり解決できることが多いですからね。だからこそ、ミスマッチが生まれないような出会いの機会をいかにしてつくるかがすごく大事で、企業とクラブのつなぎ役としてのJリーグの力量が問われるところです。クラブの課題に対して企業がどれだけ入っていけるか。逆に、企業側が『関わりたい』と思ったときにJリーグとしてどうサポートできるか。その点においても、SPLは大きな役割を果たせる仕組みだと思っています」

――たしかに実践的なパートナーシップが今後増えていけば、クラブとスポンサー企業の関係性もよりアップデートされていくように感じました。その上で、ファン・サポーターに対してどんなことを伝えたいですか?

古賀「気候アクションに取り組むとき、最初から100点を目指す必要はなくて、まずは一歩を踏み出すことが大事。そういった考え方をよく聞きますし、僕たちクラブにも当てはまるものだと思っています。それはファン・サポーターに対しても同じで、『完璧じゃなくていいから、まずはやってみよう』というメッセージを届けていきたいですね。

応援してくださるみなさんの中には子どもも大人もいて、全員が気候アクションの意味や効果を100%理解するのは正直難しい。それでも『なんとなくよさそう』『やってみようかな』くらいの感覚で、気軽に行動できるような雰囲気をクラブ側がつくっていくことが大切だと思います」

大村「『消費者行動を変えよう』という言葉をよく耳にしますが、人の行動を変えるのはそんなに簡単ではありませんし、なにかしらのインセンティブ(行動を促すための刺激・動機・励み・誘因)もなしにおこがましい話だとも思うんです。結局のところは辻井さんも仰られていたようにシステムチェンジが必要ですよね。それも気づかないうちに変わっていたというくらい自然に、それでいて仕組み全体が先立って変わっているのが理想だと思います」

辻井「Jリーグでは現在、特任理事として小野伸二さん、中村憲剛さん、内田篤人さんが気候アクションに関わる様々な活動を手伝ってくれていますが、Jリーグの選手OBたちは本当に多岐に渡るフィールドで活躍されています。そういう意味でも、気候アクションは大切だから全員協力してください、という風には思っていません。でも、特任理事の3名のように自身の知名度を活かして貢献してくれると言ってくださるOBが増えれば、もちろん大きな力にはなります。れている。だからこそ、Jリーグ側はまず、アクションの意義や目的を知ってもらう機会や、実際にアクションを起こしたいと思ってもらえた際の機会を提供することが大切だなと感じています。もしOBや選手が関わってくれる時には、僕たちは全力で引き受けますから、関心があったら、気軽に飛び込んできて欲しいとお伝えしたいですね。

そして、ファン・サポーターのみなさんにも、『なぜJリーグがこういう取り組みをしているのか』をぜひ知っていただけたら嬉しいです。僕たちがやりたいのは、サッカーを守ること。100年後の子どもたちにも、サッカーを楽しめる未来を残したい。そのために、Jリーグは1993年から“100年構想”を掲げています。2093年がひとつの節目ですが、そのとき、本当にサッカーが続いているかどうかは保証されていません。だからこそ、いまできることをいっしょにやっていけたらと思っています。

やり方については、もちろんいろんな意見があると思います。でも最終的には、『未来にこのサッカー文化を引き継いでいきたい』という思いだけは、どうか共有していただけたら嬉しいです。興味を持って下さった方には、参加できる仕組みもこれからどんどん用意していきます。タイミングが合えば、ぜひその時は参加していただきたいですし、たとえ参加型の機会がなくても、『こういうことできない?』とか『こう思うんだけど』みたいな声を届けていただけるだけでも、本当にありがたいです」

取材場所としてお借りしたJリーグ本部のエントランスにて。

SPL参画の効果が表れてくるのは、まだ先の話。それは気候アクションも同じで、成果を焦らず、根気強く続けていかなくてはいけない。だからこそJリーグやヴィッセル神戸が提供してくれるサッカーの観戦体験のような、日常の中にあるスポーツの楽しさとセットで考えていけたら、きっと長く続いていくものにしていけるはず。そしていつか「自分たちは気候アクションに関わっているんだ」ということを忘れるくらい自然に取り組んでいる日が訪れたら、それこそが理想とするシステムチェンジなのかも。楽天グループが掲げる「スポーツとともに、もっといい未来へ。A BETTER FUTURE TOGETHER」というテーマも、その行動指針である「Sports for Everyone」「Green for Future」も、すべてはその日のために。まずは一人ひとり、自分ができることからはじめていこう。

TEXT : Yuka Sone Sato (LITTLE LIGHTS) PHOTO : Teppei Hori EDIT : Yohsuke Watanabe (IN FOCUS)

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