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データと対話で投手を支える。楽天イーグルスのピッチングコーディネーターってどんな仕事?

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データが野球を変えると言われるいま、野球にかかわる仕事にもさまざまなかたちがある。そのひとつが、投手育成の要を担うピッチングコーディネーター。楽天イーグルスで担当しているのは、かつて投手として活躍した釜田佳直さん。仕事内容から、現役時代にマウンドで感じたこと、いまだからこそ見えること、そしてやりがいまで話を聞いた。野球とともに新たなキャリアを重ねる釜田さんの言葉には、スポーツにかかわる仕事を目指す人にも、いい未来をつくるヒントがありそうだ。

投手を指導する仕事といえば、ピッチングコーチが思い浮かぶ。マウンドで投球フォームやメンタル面を直接指導するのが従来からの役割だが、ピッチングコーディネーターはデータ活用が進んだ近年に生まれた新しいポジション。分析や数値化を軸に、コーチとは違った角度から投手陣を支える存在として位置づけられており、楽天イーグルスでは2024年から現在まで、釜田さんがその役割を務め続けている。

――ピッチングコーディネーターという役職はあまり聞きなじみがないのですが、シーズン中はどのような仕事をしているのでしょうか。

「試合前は投手陣に向け、映像や過去の対戦成績をまとめて、どういったプランで試合に臨むのが最適かを考えた資料をつくり、ミーティングで共有しています。また、試合中はベンチに入り、投手交代の参考になる情報を監督やコーチに伝えています。試合後にはその日の登板を数値化して選手にフィードバックするので、そのための分析と資料作成も行っています。加えて、二軍にいる選手の状態を把握することも仕事のひとつです」

――かなり幅広いですね。二軍の選手の状態も把握するのは大変ではないですか?

「昨シーズンまで二軍のピッチングコーチだった永井怜さんが、いま二軍のピッチングコーディネーターを務めているので、これまで以上に一、二軍の情報共有が密になり、連携も深まりました。各投手の状態から、リハビリに励んでいる選手の状況についてもしっかり共有することができています。ピッチングコーディネーターは、投手の育成から復帰のタイミングにもかかわる大切な仕事なので、とてもやりがいがあります」

現役引退後、スコアラーを経て、ピッチングコーディネーターに就任した釜田さん。新設のポジションにとてもやりがいを感じたという。

――試合中は投手とコミュニケーションを取る姿も多く見られますが、どのような話をされているのでしょうか?

「グラウンドに出ている投手が何を感じているかを確認しています。データはあくまで過去のもの。その日のコンディションや相手の作戦によって、試合前のプランを練り直すことも多いですから。バッテリーに何を感じているかを聞くこともありますよ」

――シーズン前やシーズン後は、どのような仕事をされているのでしょうか?

「シーズン中は一軍に帯同しているので、秋季練習や春季キャンプは、二軍の選手のピッチングを実際に見られる大切な時間です。秋季練習ではブルペンで投球映像を撮影し、シーズンの振り返り、オフの自主トレで取り組みたいことなどをヒアリングします。そして、春季キャンプでその取り組みによってどのような変化があったのか、新たにチャレンジした球種が実戦で使えるのかなどを話します。常に投手とコミュニケーションを取りながら、シーズンに向けた準備をしています」

――春季キャンプのブルペンでは投手の後ろに必ず釜田さんがいたのが印象的です。

「春季キャンプはブルペンの数が多いので、投手一人ひとりに対応できるよう、カメラの台数も増やしていただきました。楽天グループはデータ分析への理解も深いのでとてもありがたいですね。おかげでより多くのデータが収集でき、投手たちも興味を持ってくれるようになりました。近年はデータを使った野球がより浸透してきたと感じています」

試合前の練習でも映像で分析を行っている。

――釜田さん自身も2012年から2022年まで楽天イーグルスでプレーをされていました。元選手というキャリアは現在の仕事にどのように活かされていますか?

「野球経験がなくてもデータは扱えますが、選手の気持ちや状況を理解して伝えるのは難しい。その点では選手経験が活きていると感じます。元選手として、新たなことにチャレンジする難しさや実際のマウンドで表現する難しさも理解できるので、伝え方も工夫しています」

――データを集めて提示するだけではなく、背中を押すための言葉にも気を配っているのですね。

「選手が勇気を持ってチャレンジすれば、結果が変わるかもしれない。そのための言葉がけはとても大事なことだと思っています。いまも日々勉強中です。それには信頼関係も必要ですから、日頃からコミュニケーションを取ることも大切にしています」

――楽天イーグルスがより一層強くなっていくために、どのようなことを心がけていますか?

「一日でも長く活躍できる選手が増えてほしいと考えています。そのためには試合で結果を残し続けることが必要ですが、活躍すれば当然、相手にも研究され、対策を練られる。そこから先へ進むためには、我々が選手にいろいろな角度から提案することが必要です。育成はもちろん、選手が結果を残せるようにサポートをしていきたいですね」

――楽天グループでは「スポーツとともに、もっといい未来へ。A BETTER FUTURE TOGETHER」というスローガンを掲げています。釜田さんが考える“いい未来”とはどんなものですか?

「どれだけデータを分析して選手に伝えても、実際にプレーに活かされなければ意味がない。データを活かして選手が活躍することが、僕の喜びであり、楽天イーグルスの“いい未来”だと思います」

――将来、スポーツにかかわる仕事に就きたいと考える子どもたちにはどんなことを伝えたいですか?

「部署には野球経験がないメンバーもいますが、彼らの言葉は興味深いんです。選手を経験した僕が聞いても『なるほど』と思うことがたくさんあります。大切なのは野球を好きな気持ちと、自分で考える力。好きだからこそ、細かいところまで考えが及び、あらゆる角度からの視点を持つことができると思うんです。たとえば『なぜこのボールは打たれないんだろう』という自分の疑問から、『こういう回転をしているからかな』と自分なりの考えを出せる見方をすることが大切。これから夢を追いかける子どもたちには、経験の有無ではなく、その気持ちを大切にしてほしいです」

適切な言葉がけと高いコミュニケーション能力で選手からの信頼も厚い。

情報が多くなればより詳細なデータも手に入るが、一方で迷いも増えてしまう。だからこそ膨大なデータの中から、“いま”の選手やチームに必要な情報を端的にわかりやすく伝えなくてはいけない。分析力とコミュニケーション力、そして伝え方にまで気を配る存在がいるからこそ、選手たちはグラウンドで自身のプレーに集中できる。いつも見ている試合の裏には必ずそんなピッチングコーディネーターの存在がある。そんな支えがあることを知って試合を見れば、野球はさらに奥深く、おもしろくなるだろう。

TEXT:Chiharu Abe
PHOTO:Haruna Kanbayashi
EDIT:Yohsuke Watanabe, Satoru Komura, Shiori Saeki(IN FOCUS)

  • 楽天イーグルス
    釜田佳直

    1993年10月26日生まれ。2011年のドラフト会議で2位指名を受け、楽天イーグルスに入団。ルーキーイヤーにプロ初登板を果たすと7勝を挙げた。その後はケガに悩まされながらも通算88試合登板で21勝を挙げる。2022年に現役引退後はスコアラーとして球団に残り、2024年からピッチングコーディネーターを務めている。

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