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数字より会話が勝利につながる? リーグ優勝の裏側には、ヴィッセル神戸「科学部」の存在があった!

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サッカー界はいま、データ分析に注目が集まっている。Jリーグ公式サイトでは選手やクラブのスタッツが公開され、数字の視点から試合を楽しむファン・サポーターも増えてきた。ヴィッセル神戸には「科学部」と呼ばれる分析専門部署があり、チームのパフォーマンス分析はもちろん、対戦相手の研究やスカウティング業務も担っている。その取り組みをひも解いていくと、ヴィッセル神戸が強さを維持し続ける理由が見えてくるかもしれない。

近年のサッカー界では、データ分析の重要性が急速に高まっている。選手の走行距離やスプリント回数といったフィジカルデータに加え、パスコースや守備位置、対戦相手の傾向まで数値化し、戦術立案や育成に生かすことが当たり前の時代となった。欧州のトップクラブでは専門部署を設置するケースも珍しくなく、ピッチ上のプレーの裏側には膨大な情報が蓄積されている。監督や選手を支える分析スタッフは、いまや競争力を支える“見えない戦力”として欠かせない存在だ。

選手たちはGPSトラッキングベストを着用して練習。計測された走行距離やスピード、心拍数などのパフォーマンスをデータ化し、分析するのが科学部の役割のひとつ。

Jリーグの中でも先駆けだった科学部の設立

ヴィッセル神戸でデータ分析を担う科学部は2019年に設置された。当時はタイトルを獲得したことがなく、監督やチームスタッフ、選手の入れ替わりが起こる中で、そのノウハウが引き継がれず、毎回チームを建て直さなくてはいけなかった。監督やコーチ陣の意思決定のプロセスを記録し、選手たちのデータを残して活用できれば、チーム成績はもっと向上するのではないか——。そんな議論が交わされ、楽天グループからの出向で、メディカル・パフォーマンス担当の饗場さん、スカウト担当の今村さん、監督や現場スタッフと分析を行う松本さんらが加わり、科学部が立ち上がる。まだJリーグでデータ分析を行うチームは数少なく、業界でも先駆けた取り組みだった。

チームの練習にも帯同する科学部。黒の練習ジャージーを着ているのが松本さん。

「よい分析はよいコミュニケーションから生まれる」

科学部の活動をのぞいてみると、意外な一面が見えてくる。データ分析と聞くと、GPSデータや映像を解析し、パソコンと向き合う姿を想像するかもしれない。しかし、実際の業務はそれだけではない。メンバーは監督やコーチ、メディカルスタッフと何度も意見交換を重ねながら仕事を進めている。チームがどのような課題を抱え、どんな情報を求めているのか。その背景を理解してはじめて、価値のある分析結果を届けられる。最終的なアウトプットは数字だが、それを活用するのはあくまで人。現場の声に耳を傾け、相手のニーズに寄り添う姿勢は、楽天グループのビジネス文化にも通じるものであり、科学部にとっても重要な土台となっている。

トップチームの選手たちから取得したデータの数々。 ※機密情報のためぼかして掲載しています。

選手とのコミュニケーションは分析を行う上で重要な要素のひとつ。

実際、科学部のメンバーが口をそろえて語るのは、「よい分析はよいコミュニケーションから生まれる」ということ。どれほど精度の高いデータであっても、現場が求めるかたちで伝わらなければ意味がない。監督が何を判断材料にしているのか、選手がどんな悩みを抱えているのかを理解したうえで情報を整理し、必要なタイミングで届ける。その積み重ねが信頼関係を生み、データがはじめて意思決定に活かされる。科学部の仕事は数字を集めることではなく、人と人をつなぎながら、価値ある情報へと変換することなのかもしれない。

課題を乗り越えて、クラブ全体の“もっといい未来”へ

一方で、データの蓄積がそのまま結果につながるわけではない。2025年シーズンは、科学部発足から5年以上が経過し、リーグ3連覇への期待も高まっていた。しかし最終順位は5位。得点数は前年から15ゴール減少し、ヴィッセル神戸の武器である縦に速い攻撃や、クロスからの得点パターンも思うように機能しなかった。数字だけでは解決できない課題に直面したシーズンだったと言えるだろう。それでもクラブは歩みを止めなかった。2026年の明治安田J1百年構想リーグに向けては、ミヒャエル・スキッベ新監督のもとで分析手法や評価指標を見直し、課題解決に着手。その成果は見事な優勝というかたちで実を結んだ。

科学部が今後見据えているのは、アカデミー世代も含めたクラブ全体でのデータ活用。現在はトップチームを中心に取り組んでいるが、若年層の情報まで一貫して蓄積できれば、選手の成長予測や長期的な強化戦略にも役立てられる可能性がある。育成年代からトップチームまで同じ視点でデータを管理することで、クラブ全体の強化サイクルはさらに洗練されていくことが期待される。ヴィッセル神戸が目指すのは、世界に通用するアジアNo.1クラブ。データをあたらしい武器として、悲願達成へ突き進んでいく。

クラブ強化のためには、科学部の存在は欠かせない。

ピッチで歓声を浴びるのは選手たちであっても、その活躍の裏には多くのスタッフの支えがある。科学部もまた、その一翼を担う貴重な存在。彼らが扱うのはデータだが、本当に向き合っているのは人であり、組織であり、クラブの未来でもある。数字を集めるだけで勝てるわけではない。しかし、人との対話を通じて数字に意味を与えることができれば、それは大きな武器になる。サッカー観戦はもちろんのこと、自分たちがプレーする練習や試合でも、アナリストとしての目線を取り入れるとおもしろいかもしれない。ヴィッセル神戸の強さを支える科学部の挑戦は、これからも続いていく。

TEXT:Kodai Wada
EDIT:Yohsuke Watanabe, Satoru Komura, Shiori Saeki(IN FOCUS)

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