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ソプラノ歌手とアスリートにも共通点があった!? 楽天スーパーナイターで国歌独唱に臨んだ高橋維さんが語る、大舞台での心構え

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花びらが舞うような美しい歌声が、満員の観客を包み込む。年に一度、東北を拠点にする楽天イーグルスが東京ドームで試合を行う楽天スーパーナイターで国歌独唱を務めたのは、ソプラノ歌手の高橋維(たかはしゆい)さん。国歌独唱自体もはじめての経験だったという高橋さんは、どのような想いで大舞台に立ったのか。話を聞くと、アスリートにも通ずるプロフェッショナルのメンタルがあった。

——ソプラノ歌手としてご活躍される高橋さんですが、これまでスポーツとのかかわりはありましたか?

「実は高校時代にラグビー部のマネージャーを務めていました。球技はあまり得意ではないのですが、父がラグビー好きだったこともあってやってみたんです。音楽の世界とはまったく異なるとても貴重な経験でした。また、野球観戦をはじめスポーツを生で観る機会も何度かありましたが、まさかわたしがプロ野球の試合で国歌を独唱することになるなんて思ってもいませんでした」

——国歌独唱が決まったときの心境を教えてください。

「そもそも歌手として国歌を歌うこと自体がはじめてのことですし、しかも東京ドームという大舞台で歌うのかと思うと、それだけで緊張しました。ただ、試合前の選手たちのドキドキやファンの方々のワクワクを想像してみたら、すごく楽しみになってきて。もちろん緊張はしているのですが、気づけば今日が早くきてほしいと思うようになっていました」

国歌独唱を目前に控えても、緊張よりも楽しみのほうが大きいのだと、柔らかな笑顔を見せてくれた。

——緊張と期待の両方ですね。大舞台に向け、どんな準備をしてきましたか?

「準備自体は普段と変わらないのですが、歌への向き合い方はじっくり考えました。『君が代』は日本人にとって特別な存在ですし、厳かな雰囲気で心に響く歌です。歌詞が持つストーリー性を意識して、情景や感情のグラデーションを意識して表現を作り、歌うことを心掛けました」

——衣装にもこだわったと伺いました。

「衣装選びはとても楽しかったです(笑)。今日の楽天イーグルスのユニフォームがピンク色だと聞き、国歌と合う色って何色だろう? と考えたときに桜が浮かんだんです。東京ドームでひらひらと美しく舞うさまをイメージしながら、楽しく準備をしました」

桜をイメージしたというピンク色のドレス。

——大舞台に立つとき、ご自身が最高のパフォーマンスを発揮するために、常に心がけていることはありますか?

「まずはしっかりと準備すること。曲の練習はもちろんですが、コンディションを整えることも重要です。あとはとにかく楽しむことですね。本番に向けて集中すると、よいパフォーマンスをしなくてはいけないと考えて過度に緊張してしまうこともあるので、お客様を楽しませるためにまずは自分が楽しもう、と常に心がけています」

——スポーツ選手と歌手の共通点はあると思いますか?

「準備の大切さは、スポーツ選手も同じだと思っています。本番で自分の力を発揮するためには、普段の地道な練習や体調管理、体のケアは欠かせません。微細な身体の使い方に気を配りながら、パフォーマンスをする点もよく似ていると思います。数ミリ単位の狂いやわずかな力の入り具合が、結果や表現のクオリティを大きく左右します。また、スポーツ選手はファンの方から寄せられる期待や結果に対するプレッシャーも相当大きいはず。大舞台でも普段の自分でいるために、メンタルを維持するという部分も歌と共通しているんじゃないかな、と感じています」

——これまでに高橋さんが歌われてきた楽曲の中で「スポーツに合う曲」をあげるとしたらどんな曲でしょうか?

「モーツァルトの歌劇の『魔笛』の中の『夜の女王のアリア』という曲でしょうか。とても有名で、歌い手にとってはエネルギーも技術も必要な難しい曲です。わたしの大舞台のデビュー作でもあるので、自分を奮い立たせ、成長へと導いてくれる曲という想いがあります。スポーツに合うかは分からないのですが、わたしにとってはいまだにこれが“戦いの曲”です」

本物の美しい歌声が、試合直前の東京ドームに響く。

——楽天グループでは「スポーツとともに、もっといい未来へ。A BETTER FUTURE TOGETHER」というスローガンを掲げています。高橋さんは“いい未来”と聞いて、どんな未来を想像しますか?

「昔から将来のことはあまり考えない性格なんです。どちらかというと、いまという瞬間を楽しむように生きてきました。でも子どもが生まれてからは、この子が成長する頃にどんな未来になっているかな? と考えるようになりました。子どもが健康に成長できて、わたし自身も楽しく歌える環境があれば、それがきっと“いい未来”と言えるんだろうなと思います」

歌唱に込めた高橋さんの想いは、観客へ確かに伝わったはず。

満員の観客の前で歌われた国歌独唱は、それまでの華やいだ雰囲気を一転させ、真剣勝負の試合への空気へと引き締める素晴らしいものだった。そして大役を終えた高橋さんは「楽しかった!」と、笑顔でその感想を伝えてくれた。

本番を成功へ導くために欠かせないのは、入念な準備と平常心。そして何より、自分自身がその舞台を楽しむこと——。高橋さんの言葉からは、歌手とアスリートという異なる世界で活躍する者同士が共有する、パフォーマンスの本質が見えてきた。東京ドームに響く歌声には、積み重ねてきた努力と、「聴く人の心に届けたい」という真っすぐな気持ちが込められていた。

PHOTO:Ou Itabashi, Teppei Hori
TEXT:Kodai Wada
EDIT:Yohsuke Watanabe, Satoru Komura (IN FOCUS)

  • ソプラノ
    高橋維

    新潟県出身。東京藝術大学大学院修了。第27回五島記念文化賞オペラ新人賞受賞を機にウィーンにて研鑽を積む。『魔笛』夜の女王、『ランメルモールのルチア』タイトルロール等多数主演、東京フィルハーモニー交響楽団をはじめ主要オーケストラとの共演も数多い。華やかな舞台姿と確かな歌唱力で観客を魅了し続けている。二期会会員。

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