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ホームランを打つために。楽天イーグルス ルーク・ボイトのひと振りの裏にあるもの

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メジャーリーグでもホームラン王のタイトルを獲得した経歴を持ち、昨年は途中加入ながら13本のホームランを記録した楽天イーグルスのルーク・ボイト選手。その派手なひと振りの裏には、日々の準備、支えてくれる家族への感謝、そしてアスリートとして社会に何を届けられるかという想いがあった。スラッガーとしての姿だけでは見えてこない、彼の内面に迫る。

「試合は待ってくれない」だから毎日準備する

毎日のように試合が行われるプロ野球では、どんな選手にも思うように体が動かない日や気持ちが乗らない日はあるだろう。それでも試合は予定通りはじまり、結果を求められる。

2025年、楽天イーグルスにシーズン途中で加入し、67試合で13本塁打を放ったスラッガー、ルーク・ボイト選手が、試合が続く日々のなかで何よりも大切にしているのは、ホームランそのものではなく、そこに至るまでの準備だという。

「うまくいかない状況でも試合は待ってくれません。だからどんなときでも試合でベストパフォーマンスを発揮するために、環境も体も気持ちも整えて準備することが大切なんです。毎日その準備を積み重ねています」

そして、その準備が実を結んだとき、ボイト選手は野球というスポーツの魅力を感じるという。

「準備を重ね、イメージしていたボールを待ってホームランを打ち、チームが勝つ。これは野球をやっていて、もっともうれしい瞬間です」

派手な一打の裏側には地道な積み重ねがある。このようにボイト選手が準備を大切にする理由の一端は、日本に来て間もない頃の苦労にあった。

ハイパフォーマンスを発揮するためには、準備が大切だというボイト選手。トレードマークのヘアバンドの装着も欠かせないルーティン。

日本での挑戦で学んだ家族の大切さ

来日したばかりのボイト選手にとって、楽天イーグルスでのスタートは決して順風満帆なものではなかった。

「最初の3週間は本当に苦労しました。自分がやってきた野球とはまったく違ったので、アジャストするのが大変でしたし、慣れない土地で自分のルーティンを見つけることも簡単ではありませんでした」

さらに異国での生活は、野球以外の部分でも試練だった。

「家族と離れて暮らすことも本当に苦しかったです」

苦しい経験を経て、ボイト選手はある大切なことに気づいたという。

「野球は浮き沈みの激しいスポーツですが、いいときも悪いときも気持ちをフラットに保ち、普段の自分でいることが大切だと改めて学びました。そして、そのために家族の存在は欠かせないのです」

3週間後、家族が来日し、改めて存在の大きさを実感した。

「自分を支えてくれる人が近くにいることは、本当に心強かったです。家族が来てから安心してプレーできるようになり、本当に少年のような気持ちで野球を楽しめました。素晴らしいチームメイトとプレーできて、数え切れないほどの思い出もできました」

苦しさを知っているからこそ、野球を楽しめる。その言葉には、異国で挑戦するアスリートならではの実感が込められていた。

メンタルの安定をもたらした家族の存在が、好成績につながったという。

スポーツには、人を前向きにする力がある

準備を大切にするボイト選手は、スポーツの価値を勝敗だけでは語らない。では、彼が考えるスポーツの価値とは何か。そこには楽天グループがスローガンとして掲げる「スポーツとともに、もっといい未来へ。A BETTER FUTURE TOGETHER」にも通ずるマインドがあった。

「世の中には嫌なニュースや大変な出来事が数多くあります。でもスポーツの時間だけは、観客も選手もひとつになって、みんながエキサイトして嫌なことを忘れられる。その瞬間に携われることを誇りに思います。また、小さい子どもたちは、選手とハイタッチをしたり、サインボールをもらったりすれば一生の思い出になりますよね。スポーツはいろいろな人に本当に素晴らしい影響を与えられると思っています」

自身も少年時代、地元のセントルイス・カージナルスの選手たちと触れ合った思い出をいまでも鮮明に覚えているという。その記憶は、次の世代への想いにも重なって見える。

「野球を引退した後は、地元に戻って少年野球の指導や支援ができたらと思っています」

そんなボイト選手のまなざしは、次世代だけでなく、日々の暮らしの中の環境問題にも向けられている。

その一例が、アメリカのサステナブルな飲料水ブランド「パスウォーター」のバックアップ。プラスチックではなく、アルミニウム製のリユース可能な容器を採用する理念に共感し、日々愛用するだけでなくSNSなどでも紹介している。

また、日本に来て街の美しさとリサイクル文化に驚いたという。

「日本は本当にきれいで清潔な国だと感じました。ゴミ箱もいくつかの種類に分けて設置されていることに驚きましたし、自分も日頃からリサイクルを意識するようになりました」

気持ちをリラックスさせながらも試合に向け、徐々に集中力を高めていく。

最高のパフォーマンスのために気持ちをフラットに保つこと、支えてくれる人に感謝すること、次世代や環境について考え行動すること。ボイト選手のそのすべての行動は、スポーツを通じて誰かの人生に小さな幸せを届けることへとつながっている。

ホームランを打つことだけが彼の仕事ではない。

ボイト選手は今日も、グラウンドの内外で自分にできることを積み重ねている。

※この取材は2026年3月に行われたものです。

TEXT & EDIT:Satoru Komura (IN FOCUS)
PHOTO:Atsutomo Hino

  • 楽天イーグルス
    ルーク・ボイト

    1991年2月13日生まれ。アメリカ・ミズーリ州出身。2013年のMLBドラフト22巡目でセントルイス・カージナルスに入団。その後ヤンキース、パドレス、ナショナルズ、ブルワーズなどを渡り歩き、2020年にはア・リーグ本塁打王を獲得した。2025年東北楽天ゴールデンイーグルスに入団。シーズン途中加入ながら13本塁打を放ち、チームの主軸として存在感を示した。

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