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2000安打を達成した楽天イーグルス 浅村栄斗。それでも“もっといい未来”には到達しない?「偉大な先輩方がまだ先にいますので、もっと近づきたい」

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楽天イーグルスの浅村栄斗選手が5月24日の日本ハム戦(楽天モバイルパーク宮城)で初回にライト前ヒットを放ち、平成生まれのプロ野球選手としてはじめて2000安打を達成した。史上56人目、そのなかでも34歳6ヶ月での到達は7番目の早さとなった。4月22日には300本塁打、6月5日には2000試合出場にも到達するなど偉業続きのシーズンを迎えているいま、自身のプロ野球人生を振り返りつつ、まだまだ続く選手としての未来を語ってもらった。

——2000安打達成、おめでとうございます。やはり喜びも格別ですか?

「ありがとうございます。平成生まれ初ということについてはすごくうれしいですし光栄に思います。ですが数々の偉大な先輩方がまだ先にいますので、いまはその方々にもっと近づきたいという思いの方が強いですね」

——今年は2000安打に加え、4月22日には300本塁打、6月5日には2000試合出場と長い時間をかけて築き上げてきた節目の記録をたくさん迎えました。記憶に残っている1本、1本塁打、1試合をそれぞれ教えてください。

「やはりプロ初打席での1本目のヒットですね(2010年3月31日、ソフトバンク戦)。あの1本がすべてのはじまりでしたから。そして今回の2000安打目のヒットもとても印象に残っています。その数字を意識してから(達成まで)時間がかかりましたし、とても苦しかったので。打った瞬間、過去にこの記録を達成された先輩方の気持ちを考えたんです。どういう感情や感覚だったのかな、みんな辛かったのかな、とか。これまでの節目には出てこなかった感情だったので、あらためて2000安打は特別なんだなと。ホームランや試合に関しては特にはないんですよね」

――浅村選手といえば、楽天イーグルスが2013年にパ・リーグ初優勝を果たした試合では対戦相手の西武ライオンズに所属されていました。しかも優勝決定の瞬間に打席に立たれていましたが、ああいった悔しい場面も記憶に残っていますか?

「そうでしたね!たしかに勝った試合よりも負けた試合の方が印象に残っている気がします。悔しいという感情はその時もとても強いのですが、時間が経ったいまも残っているんです。そういう意味では目の前で胴上げをされた試合はよく覚えていますね」

――プロ野球は毎日のように試合があり、成績も目まぐるしく変動していきます。そうした日々の慌ただしさやプレッシャーとどう向き合っていくか、浅村選手なりの方法はありますか?

「いい時というのは本当に少なくて、うれしい出来事よりも悔しい出来事の方が圧倒的に多いんです。後悔することもたくさんあるのですが、その現実から逃げずしっかり向き合うことは若い時からすごく意識してやってきましたね。西武時代もはじめの頃は、守備面で当時の監督に何度も怒られましたが、投げやりにならないよう努めていました。そこはプロに入ってからずっと、いまも大事にしていますね」

――2000安打達成により日本プロ野球名球会入りの資格も得るなど、名実ともに一流のプロ野球選手の仲間入りも果たしました。「プロフェッショナルであり続けるため」にはどんなことが必要だと考えますか?

「2000本ものヒットを打つにはもちろん技術も必要な要素ではありますが、レギュラーとして出ていないことには絶対に到達できない数だとも思います。だからこそ、いかに継続して活躍できるかが大事なのかなと。1000本から1500本、1500本から2000本とより難しくなっていくことも痛感しました。その過程でレギュラーを奪われてはいけないですし、同時にメンタルもやっぱり大事です。先ほども言いましたが、いい時というのは本当に少ない。だからこそ悪い時にどうがんばれるか、どう自分と向き合って、ごまかさないでできるか。いま思えばそういった部分はすごく大事だと感じますね」

――プロ17年目を迎え、長きに渡り第一線で活躍されてきました。その間にプロ野球の世界でもさまざまな考え方や常識が変わってきていますが、そうした変化をどのように受け止めていますか?

「昔に比べてデータ面での発展はものすごいなと感じています。審判のAI化の話まで出ていますよね。もちろんそれらは捉え方によっていい面も悪い面もあるとは思います。ただ野球というスポーツはその場の勝負勘や空気感もすごく大事で、そこはデータには表れない部分だったりもします。あらゆるデータをもとに選手の傾向を知ったり、攻撃や守備に活かすのはとてもいいことだとは思うのですが、数字ばかりに囚われていると、なんだかおもしろみがなくなるような気もしていて。生身の人間同士の対決、その場にしかない空気感というのは今後も変わらないでほしいですね」

――プロ野球界の“もっといい未来”をどのように想像しますか?

「僕らにできることはファンのみなさんに喜んでいただけるプレーをすることだと思っています。勝利を届けることももちろん大事ですが、大きなホームランだったり、ピッチャーのすごい投球を見に来ているお客さんもたくさんいると思うので、1つひとつのプレーも大事になるのではないかなと。楽天イーグルスの話で言えば近年は打ち勝つ試合がなかなかできていないので、スタンドが盛り上がるような試合をファンの方に見てもらえるように僕自身もレベルアップしていきたいですし、チームとしてももっともっと楽しんでもらえるようにレベルアップして変えていきたいなという気持ちはあります」

――近年は多彩な変化球や打者のタイミングをずらす投球など、マウンドでのピッチャーの工夫も増しており防御率が低く打率も低い、いわゆる投高打低が進んでいます。だからこそ、もっと打ちたいという思いが強まるものですか?

「そうですね。ピッチャーのレベルはここ数年で一気に上がったのを実感しています。そこにバッターの感覚がまだ追いつけていないといいますか。僕らがレベルアップしなくてはいけませんね。プロ野球をさらに盛り上げるためにも必要なことです」

――最後に、これからスポーツで無限の夢を見ていくであろう子どもたちに向け、その夢の先にいる先輩として言葉をもらえますか?

「継続すること。それに尽きます。どんなスポーツでも喜びはきっと一瞬しかありません。でも、その瞬間があるからがんばれる。そのために、悪い時、ダメな時にも、いかに継続して真摯に向き合っていけるかが大事です。僕たちも、プロになりたいと思ってすぐになれたわけではないですからね。そのためにずっと練習してきて、いまも練習を続けています。その過程があってこそのプロ。やれるだけのことを継続してやる。そうすれば夢や未来にきっと近づけると僕は思います」

2000安打達成直後の会見では「この1本を打つためにいままでもずっと練習してきていますので、打つ難しさもすごく感じていますけど、1本でも多くチームに貢献できるようにがんばりたいなと思います」と語った浅村選手。ベテランになったいまも、向上心と勝利への貪欲な姿勢は衰えない。次はどんなプレーでスタジアムを沸かせ、どんな快挙を成し遂げてくれるのだろうか。

TEXT:Chiharu Abe

PHOTO:Ryotaro Moritani

EDIT:Yohsuke Watanabe (IN FOCUS)

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