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Jリーグ秋春制がスタートし、ヴィッセル神戸の変化と進化が見えてきた? チームの序盤戦を番記者・井川朋宏さんが振り返る

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秋春制の導入によって新時代の幕が上がった今シーズンの明治安田J1リーグ。気温など試合環境も大きく変わる中で、ヴィッセル神戸はシーズン序盤をどのように戦っていたのか。syncSPORTS by Rakutenでもお馴染みの、アウェイゲームも含むヴィッセル神戸の全試合を見続けてきた番記者、神戸新聞の井川朋宏さんに振り返ってもらった。チームの“いま”を知り、ここから先の応援につなげよう!

2026年2~6月のJ1百年構想リーグを制したヴィッセル神戸が、秋春制に移行したJ1リーグでも上々の滑り出しを見せている。8月下旬から5連勝を飾り、第8節を終えて6勝1分け1敗の勝ち点19で首位に立っている。開幕が従来の2月から8月となり、はじめて北海道札幌市で開いたキャンプを経て、けが人が相次ぐ事態を乗り越え、尻上がりに調子を上げてきた。

※この記事は2026年9月9日時点での情報をもとに書かれています。

選手たちは秋春制移行に好意的

Jリーグが創設34年目で「新開幕」と称した初の秋春制移行について、選手たちの受け止めは一様に好意的だった。7月の試合がなくなることで、ヴィッセル神戸のGK前川黛也は「強度、運動量を高く保ち、(サポーターが)より楽しめるサッカーを見せられる」と語っていた。

今シーズンのヴィッセル神戸は2023、2024年にJ1リーグ得点王となったFWアンデルソン・ロペス、横浜F・マリノスからMF渡辺皓太が加入。一方、戦力の流出は1月にスペイン2部のラスパルマスに期限付き移籍し、そのまま完全移籍となったFW宮代大聖らにとどまった。就任半年を経たミヒャエル・スキッベ監督体制のチーム力がより固まる可能性が高まった。

監督の厳しい視線は、常に優勝を見据えている。

涼しい札幌キャンプで強度向上

7月12日、選手たちが降り立った札幌市は最高気温が26.8度と、神戸より5度ほど低かった。会場は自然に囲まれ、風が吹けば涼しく、ピッチ2面が並ぶ好環境の白旗山競技場。クラブが「最強キャンプ」と称した名前の通り、2週間にわたって連日のように午前、午後のハードな2部練習が続いた。ベテランDF酒井高徳は「疲労を最低限に抑え、しっかりとコンディションを上げる環境は非常に大事」と語る。

また例年1月の沖縄キャンプと比較し、主将のDF山川哲史は「冬に比べて寒くない分、ケガのリスクが減る。最高の環境で最大限の努力ができ、スピーディーに状態を上げていける」と言う。百年構想リーグで負傷したMF扇原貴宏とFW佐々木大樹の出遅れに加え、キャンプ中からMF飯野七聖、新加入のアンデルソン・ロペスらが離脱したが、チームとしてはこの時期に徹底的に追い込んだことが後の高強度のサッカーにつながった。

敵地での今シーズン初戦、アビスパ福岡戦を控えた前日の8月7日、元日本代表GKの権田修一はオンラインの囲み取材で「個人的な感想としてはとてもポジティブでいい時期を過ごせた」と振り返っていた。神戸に戻ってからは気温の差を実感したといい、「この暑さで2部練習を毎日すると質が求められなくなる。そういう意味で、札幌で高い質の中でしっかり量もこなせたのはチームとしての理解度、個々のコンディションを高められ、僕らのよさを追求する期間になった」と話す。

自身がオーストリアやポルトガル、ハンガリーで培った経験から、欧州は夏でも夜に気温が20度台前半に下がるのに比べ、「日本独自の秋春制になる」と予測。さらに、冬の中断でシーズンが2つに分かれるかたちになるとして、連戦がない序盤戦で「しっかり自分たちで積み上げて暑さに順化し、回復しながら8月を過ごすことが大事」と強調していた。

2025シーズンのキャプテン就任から継続し、今シーズンも大役を任された山川選手。

主軸ベテランの相次ぐ離脱

8月7日、一足早くはじまったJ1リーグの開幕戦は得点ラッシュとなった。鹿島アントラーズが4-3で横浜F・マリノスに逆転勝ちし、ガンバ大阪が4-3で浦和レッズに勝利。2戦で計14得点が生まれた。

この試合から山川は教訓を得ていた。「ディフェンスラインにアクシデントがあると逆転されてしまう」。水分をできるだけ摂って塩をなめ、足がつることを防ぐように意識。初戦のアビスパ福岡戦は前半にエース大迫勇也が幸先よく先制し、後半途中からは攻め込まれる展開となったが、山川、マテウス・トゥーレルらDF陣を中心に最後まで1点を守り切って辛勝した。

続く8月15日のホーム開幕戦となる第2節のFC東京戦は1点を追う前半に大迫が2戦連続ゴール。1-2の終盤にはFW武藤嘉紀が同点弾を決めた。この日は本拠地ノエビアスタジアム神戸の屋根を閉め、従来の空調設備を復旧、稼働させる第1弾の試験を実施。ただ蒸し暑さの解消までには至らず、2年後の新設備導入を待つこととなった。ドイツ、イングランド、スペインで経験を積んできた武藤は「こちらの(秋春制)シーズンの方が絶対にいい」とした上で、試合後は「ヨーロッパは涼しいので、日本の夏の厳しさをひしひしと感じている。全然違い、正直かなりきつかった」とも吐露した。

この試合で酒井が負傷交代し、後に大迫と武藤も揃って離脱。先発陣を大きく入れ替えて臨んだ8月22日のアウェイ、横浜F・マリノス戦は0-1で敗れて今シーズン初黒星を喫し、攻撃では枠内シュート0本と内容的にも完敗だった。

ストライカーとしての大迫選手の活躍が、若手選手たちを奮い立たせる。

苦戦から一転3連勝

徐々に暑さが緩和されると、「疲労は蓄積しなくなってくる」(権田)という中でチームは息を吹き返した。酒井がケガ明けで先発復帰した8月29日のセレッソ大阪戦は1-0で白星を飾り、連戦となった9月2日の東京ヴェルディ戦も2-0で快勝し、無失点で連勝。まだ負傷者が多い中でも、酒井がボランチを担うなどサイドバックの選手たちが両ウイングを含む各ポジションの穴を埋め、誰がどこで出ても強度が落ちないサッカーを示した。

9月6日のホームV・ファーレン長崎戦は大迫が先発で復帰し、武藤が後半途中出場。酒井とともに4試合ぶりに3人がピッチに立った。この一戦で開幕前に「すごく状態が上がり、いいかたちで入れる」と語っていたMF郷家友太がヒーローになった。前半、本拠地でJ1リーグ6年ぶりの得点をマークし、後半は自身プロ初という2得点目。「夏のスタートはまだ経験したことがないのでやってみないとわからないが、プレーしながら感覚をつかんでいきたい」と話していた通り、6戦連続の先発出場でパフォーマンスを向上させ、本人も重視すると話していた個人得点においても結果で残した。チームも今シーズン初の3得点、3連勝と勢いづいてきた。

J1百年構想リーグではプレーオフラウンド2試合を含む17試合でピッチに立った郷家選手。その安定感・信頼感は、今シーズンも継続している。

夏場の運動量が昨シーズンから大幅向上

リーグ中盤戦を迎える夏場、各クラブの運動量は低下する傾向だったが、今シーズンはスプリント数、総走行距離の平均がともに昨シーズンの同時期を上回った。

試合データ「J STATS(ジェイスタッツ)」によると、特にヴィッセル神戸はその傾向が顕著だった。今年8月8日~9月6日のリーグ戦6試合と、昨年同時期で中断明けの8月10日~9月12日の6試合(2勝2分け2敗)を比べると、スプリント数が平均106回から26回も増えてリーグ2位の平均132回に。総走行距離は平均113キロから2キロ延びて同7位の115キロとなった。個人では特に中盤の要、MF井手口陽介が6試合中4試合にフル出場し、スプリント数でリーグ4位の平均19回、走行距離はリーグ7位の平均11キロと高い数字をマークしている。

ヴィッセル神戸は6試合で得点数はリーグ10位タイの9得点にとどまるが、失点数はリーグ最少のわずか4。本職のFW陣を多く欠いて攻撃では苦戦したものの、チーム全体の高強度で守り切ったことがうかがえる。

権田は「夏からコンディションが上がっていきやすく、年間でいいパフォーマンスを保ちやすいのではないか」と語っていた。昨年は3年ぶりに無冠に終わったヴィッセル神戸だが、今年のJ1百年構想リーグで五つ目のタイトル獲得を経て、迎えた新たなシーズン。「取れるタイトルはすべて取る」(山川)と掲げる中、まず大事な夏を順調に乗り切った。

今年7月に実施した井手口選手へのインタビュー記事はこちら。

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TEXT:Tomohiro Igawa
EDIT:Yohsuke Watanabe, Satoru Komura (IN FOCUS)

  • 神戸新聞記者
    井川朋宏

    1985年生まれ、神奈川県平塚市出身。2009年、神戸新聞社入社。2013~17年に運動部で陸上やバスケットボール、女子サッカーなどを担当。報道部などを経て2024年から運動部でヴィッセル神戸の番記者としてほぼ全試合を取材し、同年の明治安田J1リーグ連覇と天皇杯全日本選手権の2冠、2026年のJ1百年構想リーグ優勝を見届けた。

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