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「対局より緊張しました(笑)」。楽天イーグルス始球式に登場した一力遼さんが語る囲碁と野球の共通点

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楽天イーグルスの東北開幕戦で始球式を務めた仙台市出身のプロ棋士、一力遼さん。幼い頃から楽天イーグルスを応援してきたという一力さんに、囲碁と野球の共通点を聞いてみると、そこから見えてきたのは、「一手・一球の重み」と勝負の駆け引き。マインドスポーツと呼ばれる囲碁の世界で挑戦を続ける一力さんの姿は、囲碁の新たな“いい未来”を切り拓いていくはず。

――野球未経験ということですが、はじめての始球式はいかがでしたか?

「囲碁では対局前に静寂の時間がありますが、野球はたくさんのお客さんに囲まれてアナウンス紹介をされ、スタジアム全体で盛り上がっていくので、別の緊張感がありました。対局よりも緊張しました(笑)。特に今日は本拠地での開幕戦なので熱気もすごかったですね。プロのピッチャーが毎回この舞台で投げていることのすごさも実感でき、貴重な経験となりました。あたたかい拍手で迎えていただいてとてもうれしかったです」

3月31日のホーム開幕戦のマウンドに立った一力さん。試合に先駆けて力強いピッチングを披露してくれた

――仙台市出身の一力さんにとって、楽天イーグルスはどんな存在ですか?

「地元なので、ずっと身近な存在でした。小学生の頃に球団が誕生したんですが、何度もこのスタジアムに足を運びました。いまも変わらず応援していますが、現地に来られないときには自宅で観戦しています。2013年のリーグ優勝、日本一の瞬間は一番印象深いですね。テレビで観ていたのですが、画面からも熱気が伝わってきたことをよく覚えています」

――特にお気に入りの選手を教えてください。

「早川隆久選手ですね。同じ早稲田大学出身で親近感があるので、応援にも力が入ります」

――楽天イーグルスは仙台の街にどんな影響をもたらしたと思いますか?

「それまで東北にはプロ野球チームがありませんでしたが、楽天イーグルスができたことで、仙台だけでなく、宮城県、そして東北全体の一体感が強くなったように感じます。屋外球場ですが、雨の日でも多くのお客さんが集まって楽天イーグルスを応援していますよね。これはスポーツ、そして野球が持つ力だと思います。とても大きい存在だと感じています」

――囲碁はマインドスポーツとも呼ばれています。体を動かす野球とは違う種類のスポーツですが、共通点はありますか?

「一手一手を積み重ねていく囲碁では、ひとつのミスが命取りになることがあります。これは1球のミスが失点につながる野球にも通じる部分だと感じます。また、試合時間の長さも共通していると思います。囲碁も短い対局でも2時間はかかりますし、もっと長くなることも多くありますから。ずっと集中し続けることは難しいので、オンとオフの切り替えが重要になるという部分も似ているなと感じます」

――試合観戦の際、どんな部分を特に注目して見ていますか?

「普段は純粋に試合を楽しむことが多いです。ただ、野球は流れがあるスポーツですから、この状況で相手はどう動いてくるのだろう、と考えることもあります。特にランナーがいる状況といない状況で投球の組み立てが変わってくる部分は見ていて楽しいです。そういった駆け引きも囲碁と似ていますね」

――ご自身が野球をプレーするとしたら、どのポジションをやってみたいですか?

「野球経験がないので難しいですが、囲碁では『大局観』といって盤全体を俯瞰してみる能力が必要なので、そういった意味ではキャッチャーに必要とされる能力に近い部分はあるかもしれないですね。野球をやることになったら、囲碁で培った状況判断や対応力が活用できたらいいですね」

ユニフォームの背番号は囲碁(いご)にちなんで15。

――5歳から囲碁をはじめたということですが、どのようなところに魅力を感じ、のめりこんでいったのでしょうか?

「有段者だった祖父の影響ではじめたのですが、最初はやればやるだけ上達するので、成長が実感しやすかったんです。それが原動力になっていました。続けるうちに、簡単には答えにたどり着けない囲碁の奥深さを知り、その魅力に惹かれていきましたね。それはプロになったいまも変わりません。20年以上毎日やっていても、毎回あらたな発見があるんです」

――楽天グループでは「スポーツとともにもっといい未来へ」というスローガンを掲げていますが、一力さんは囲碁でどんな「いい未来」が築けると思いますか?

「囲碁は“広い碁盤に黒と白の石を交互に置いていく”というとてもシンプルなルールなので、国籍や性別、年齢や世代を超えてコミュニケーションがとれるんです。AIの出現によって、以前よりも答えに素早くたどり着ける時代になり、囲碁に対しても近づきにくさを感じてしまうかもしれませんが、世界中の方とつながることができることを知ってもらえば、囲碁人口も増え、よりよい未来が拓けていくと思います」

――囲碁の認知度は高まっていると感じますか?

「最近では仙台の囲碁教室に通う子どもが増えていますし、仙台の中学生や高校生が全国大会でいい成績を残しています。うれしいですね。今後は仙台だけでなく、東北、そして日本全体で囲碁をもっと身近な存在にしていきたい。まだ知らない方にも囲碁の魅力を発信していきたいですね」

始球式後には球団マスコットのクラッチから似顔絵を手渡され、笑顔がこぼれた。

一手一手を積み重ねる囲碁と、一球一球に勝負が宿る野球。一見異なる競技でありながら、その根底には集中力や状況判断、そして相手との駆け引きという共通点があった。世界へ挑戦を続ける一力さんと、地域に夢や感動を届ける楽天イーグルス。両者の挑戦は、これからも仙台に活力をもたらし、多くの人々の未来を照らしていくだろう。

INTERVIEW & TEXT:Chiharu Abe
PHOTO:Hayato Kubota
EDIT:Satoru Komura(IN FOCUS)

  • 囲碁
    一力遼

    1997年6月10日生まれ。宮城県出身。2010年に囲碁のプロ入りし日本棋院東京本院所属。2020年8月に碁聖戦を制し初の七大タイトルを獲得するなど、七大タイトル通算獲得数は15にも及ぶ。24年に世界大会『応氏杯』で優勝し、日本代表として19年ぶりの世界一に。25年11月には王座を奪取して史上3人目の五冠を達成した。

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