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明日から役立つ!楽天イーグルス専属管理栄養士 長坂聡子さんの食事論

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プロ選手は食への向き合い方もやっぱりプロ級。とは言え、いつも高価な食事ばかりしているというわけではなく、大切なのはあくまで考え方。東北楽天ゴールデンイーグルスの専属管理栄養士を務める長坂聡子さんが話してくれた食事論は、アスリートに限らず、誰だって明日の朝食から参考にできるものばかり!

― 長坂さんは2016年から楽天イーグルスの管理栄養士を務め、一、二軍のすべての選手、そして遠征先の球場やホテルの食事の管理も行っています。プロアスリートの食事のサポートをするにあたって心掛けていることを教えてください。

食事は基本中の基本です。体の土台となるものですから、体作りにおいて食事はどの競技のアスリートにとっても非常に重要です。どのようなトレーニングをしてもその前後でしっかり食事ができていないと意味がありません。だからこそ、どうしたら選手たちが食べてくれるかを考えながらメニューを調整しています。どんなに栄養価が高いメニューを出しても、選手が食べてくれないと意味がないですから。

― 食べてくれない理由は好き嫌いが影響しているのでしょうか?

楽天イーグルスの選手たちを見ていると、好き嫌いの激しい選手は少ないです。食に対する意識も高く、自身のコンディションに合わせて食事を選んだり、何を食べたら良いかを聞いてきてくれる選手も多いんです。ただ、家のごはんのような家庭的な食事を好む選手が多いので、盛り付けや味付けが凝ったものや、メニュー名を見て味が想像できないものはあまり食べない傾向にありますね。ですので、ビジターなどではホテルの方にお願いをして、見た目も味もできるだけシンプルに、ソースなども別添えにして選手自身が好む味で食べられるようご提供いただいています。また、食べてもらうための工夫のひとつとして、その料理に入っている食品に含まれている栄養素や、なぜ摂取した方が良いのかを書いた貼り紙をしておくこともありますね。

― 選手たちの食事の様子を見ていて、体調面の変化に気づくことはありますか?

食べる量が減っていると、ちょっと疲れているのかなとか、あまり寝られていないのかなと思うことがあります。そういうときには声をかけたり、食べやすいメニューを勧めてみたりもしますね。また、朝食を多く摂れない選手には補食を勧めることもあります。ビジター球場にはおにぎりやサンドウィッチを用意してもらっているので、エネルギーを確保するために『球場に着いたらとりあえずおにぎりを1個食べよう、ゼリー飲料をひとつとろう』などと話したりもしますね。ただ、無理やり食べさせることはありません。

― 食事がストレスにならないように意識されているということですね。

選手たちは試合でプレッシャーやストレスを感じていますから、食事のときには楽しくリラックスしてもらいたいと考えています。栄養素のベースをしっかりと整えながら、選手が食べたいと思うものが常にある環境にしたい。「このメニューでしか摂れない」という栄養素はほとんどないので、魚が食べられなかったらお肉を食べるなど。栄養価はもちろん考えますが、食べられる種類の魚、食べられる調理方法のメニューが提供できるよう、選手が食べている物を見ながら選手が食べるメニュー、食べられるメニューを増やしていく方が大事だと思っています。

― 楽天イーグルス選手の食事管理について、長坂栄養士ならではと言えるこだわりはありますか?

選手が『これ美味しいよね』とか『好き』と言っていた食品やメニューは覚えておき献立に反映するようにしています。また、遠征先でも『このホテルの、この球場のこれが美味しいよね』という声が上がるメニューは必ず出していただくようにしていますね。

― スポーツ選手に限らず、食事は誰にとっても必要なもの。読者の方に食事のアドバイスはありますか?

これを食べるだけで良いという栄養素はないですし、この食品は絶対に食べないといけないというものもありませんから、嫌いな食べ物がある場合は同じような栄養素を含む別の物を食べればいい。子どもも大人もさまざまな食品を食べて、いろいろな栄養素を摂取することが大事だと思います。また、子どもの頃の食習慣がその後の食習慣に影響すると言われているので、小さなお子さんを持つ読者の方はまず朝昼夜3食しっかりと食べる習慣をつけていただき、好き嫌いをなくすことよりもいろいろな食品が食べられるようになるということを子どもの頃から意識していただけるといいと思います。

― 近年はプロテイン系の栄養補助食品の普及もあり、たんぱく質の重要性をよく耳にします。多めに摂取すべき栄養素と言えるのでしょうか。

どれかひとつの栄養素を多く摂った方が良い、ということではなく、栄養素もバランスが大事です。スポーツをする人はたんぱく質が大事といわれますが、同時にエネルギー源や体づくりの土台となる炭水化物もしっかり摂ってほしい。あとはタイミングも重要です。特にたんぱく質は朝ごはんでしっかり摂ることが重要だと言われています。お腹が空いている状態が長く続くと筋肉の分解が進んでしまうので、筋肉をつくるための材料としてたんぱく質が必要になります。アスリートはもちろん、一般の方も、そして高齢者の方も筋肉を減らさないための食事の摂り方として朝食でのたんぱく質摂取が大事だと言われています。パンとコーヒーだけではなく、牛乳や卵やハムなどを加えてみるといいですね。

INTERVIEW & TEXT:Chiharu Abe

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