
ペアとマシンと自分。パラサイクリング日本代表、木村和平が語る一心同体の爽快感
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パラリンピック自転車競技(パラサイクリング)のMBクラス正式種目「タンデム」の日本代表である木村和平選手。2022年に行われた全日本選手権での種目「1kmTT(タイム・トライアル)」で日本新となるタイムを記録するなど、2024年に開催されるパリパラリンピックでのメダル獲得を目指してまさに全力疾走の真っ最中。自転車競技の中では珍しい2人4脚、ペアによる超ハイスピードな世界に触れてみよう。
前席には晴眼の選手(パイロット)、後席には視覚障がいの選手(ストーカー)。前後2人乗り自転車による競技「タンデム」の後席を担う木村選手はいま、短距離トラック種目の1kmTTに注力している。斜度のある1周250メートルのトラックを舞台に行われるこの種目では、シングルギアのマシンにまたがるペアがだれよりも先にゴールするためにスタートからフル加速。決着まではおよそ1分間、1000分の1秒単位で競い合い、最大時速は約70キロ近くにもなるエキサイティングなレース。木村選手はこの一瞬とも思える時間に、日頃から大切にしている思いを胸にしながら自らが発揮できるすべてを集約する。
「タンデムの醍醐味は乗車する2人の息の合わせ方。自転車競技は基本的に個人による種目が多いので、他にない魅力があります。僕はパイロットを100%信じて、求められる出力に全力で応えることだけに集中しています」。
会場によって斜度が異なるトラックに合わせて、どのくらい体重を内側に傾けるか、ハンドルの引き具合やペダリング速度をどうするか。そもそも、パイロットとストーカーそれぞれがどう走りたいのか。本番前までに何度も細かくコミュニケーションを重ねては自転車に乗り、少しのズレや違和感を解消しながらシンクロ率を高めていく。感覚の歯車がかみ合ったときのイメージを体に覚えさせる。
「サイクリング競技の本場であるヨーロッパ圏のパイロット役には、オリンピックで活躍していた選手だったり、それこそ世界チャンピオンになった選手が出場しています。でも、僕の理想は“シンクロ率を高めた強い日本人ペア”。パイロットの能力で勝っていると評価されるのは悔しいんです」。
マシン性能にしてみても、一台に数千万円をかけて完全オーダーメイドで製作する国があるとささやかれる中、開発企業が少ない日本との差は少なくない。それでも木村選手は前を向き、進み続ける。
「北海道札幌視覚支援学校でマッサージや指圧、鍼灸(はり・きゅう)を学ぶ学科に所属していた頃、タンデム自転車と出会いました。それから一年間、ひとりでバイクトレーニングを続けて、2017年から日本代表の強化合宿に呼んでいただけるようになって。地元で競技を続けることも考えましたが、挑戦すると決意して上京し、今に至ります。元々スポーツが好きで、言ってしまえば仕事をしながらトレーニングを続けられているいまも趣味の延長線上なのかもしれません。ただ、たくさんの人と出会えたり、つながっていけるのはタンデムをやっているからこそだと思いますし、間違いなく人生の楽しさのひとつになっています」。
全然思うようにいかない、という日は誰にでもある。ましてや日常に“仕事”と“代表選手”を両立させる木村選手の場合、うまく切り替えられなければモチベーションの低下はまぬがれない。「モチベーションを上げるためになにをするかではなく、下げないためになにをするか」。木村選手は“プラス思考”の習慣を作ることで、強い精神を保ち続ける。
「一日の中に細かい目標をたくさん作って、必ず良かった点を探すようにしています。目標はささいなもので『何時に起きる』とか(笑)。本当にどうしようもなくなったときには、自分がなんのために東京にいるのかを思い出したりもします。モチベーションの保ち方は仕事を通じて学びました。本来スポーツは個を優先する傾向が大きくなりますが、タンデムはチームでどう動くかを大切にする競技。仕事による人間的な成長が競技にも生きているんじゃないかと思っています」。
舞台が変わっても自分のやるべきことに変わりはない。木村選手の熱量は、スポーツが生み出す純粋な感動を多くの人に届けていく。

INTERVIEW & TEXT:Keisuke Honda
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- パラサイクリング
- 木村和平
1996年生まれ。北海道帯広市出身。楽天ソシオビジネス所属のパラサイクリングMBクラス(視覚障がい)日本代表選手。2018年「パラサイクリングトラック世界選手権」で国際大会に初参戦以降、数々の大会で好成績を残す。東京2020パラリンピックに控え選手として選出。2022年「第10回アジアパラトラックサイクリング選手権」では出場3種目すべてで金メダルを獲得、また、同年出場の「全日本選手権」1kmTTでは日本記録を更新。
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