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がむしゃらな20代から、未来と向き合う30代へ。パラ自転車競技タンデム種目・木村和平選手に聞く「アスリートと年齢」

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パラ自転車競技のタンデム種目、視覚障がいクラスの日本代表として国際大会に数多く出場する木村和平選手。彼は今年11月で30歳というひとつの節目を迎える。若い肉体を武器に突き進んできた20代から、経験を重ねた30代の競技者、さらにはひとりの人間として。この先をどう歩もうとしているのか、いまの考えについて尋ねた。

——木村選手にとって20代の競技人生はどのようなものでしたか?

「さまざまな変化を実感した時期だと思っています。特に、24歳、27歳、そして20代最後のいま、この3つは自分にとっての転換期ですね」

——それぞれの時期に感じた変化について教えてください。

「24歳で迎えた東京2020パラリンピック以前の自分は自転車競技を十分に理解しきれておらず、コーチやパートナーであるパイロットに言われたことを遂行するので精いっぱいでした。東京大会の代表選考に落選後、改めて自転車競技と向き合うことで理解が深まり、自分が何をしたいのかも次第に明確になっていきました」

パリ大会では自己ベストを見事に更新。2028年のロサンゼルス大会でさらなる高みに挑みたいと意気込みを語る。

「そうした変化を経たあと、パリ2024パラリンピックが近づくにつれて日本代表としての自覚や、競技そのものとの接し方がいっそう濃くなっていったのを覚えています。そして現在ですが、これまでと同様に競技に対して前向きな気持ちで向き合えている一方で、疲労の抜けにくさを強く感じるようになってきました。これが年齢によるものなのかはまだはっきりとしませんが、現役でいられる時間を意識するようになったのはたしかです」

——自転車競技はほかのスポーツから転身する人も多く、競技寿命が比較的長い印象があります。最終的に何歳まで競技者を続けたいか、という目標はありますか?

「満足できたときにやめるのが理想です。僕の中には、パリ大会での自己ベストよりもっといいタイムが出せるんじゃないかという思いがあるので、いまの目標はロサンゼルス2028パラリンピックに出場して全力でやりきることだけ。年齢を重ねるごとに肉体的なしんどさが増していることから考えると、短距離種目をずっと続けるのは難しいのかもしれません。ですがロード種目には自分より年上の現役選手がたくさんいます。競技を続けていくために種目を転向することも数ある選択肢のひとつだと思っています」

——同じ自転車競技ですが、トラックレース(短距離種目)とロードレース(長距離種目)だとかなりの違いがありますよね。

「ロードに転向となると、短距離用のトレーニングからロード用に切り替えて鍛え直す必要があります。また、最大ワット数(出力できるパワーの値)が近いパートナーを新たに探したり、体重をもっと絞らないといけなかったりと簡単にはいかないのが現実ですね。でも実は僕、屋外を走るロードレースのほうが好きなんですよ(笑)。屋内で記録に挑戦し続けるトラックレースにやりがいを感じていますが、乗ればどこまでも行けるところが自転車本来の魅力だと思うので」

——加齢で疲れが抜けにくくなってきた、というお話がありましたが、逆に年齢を重ねることで感じる自身の成長についてはいかがですか?

「成長した部分はコミュニケーション力ですね。特に自分の感覚を言語化できる力が身についたと思います。タンデム種目のパイロット(晴眼)とストーカー(視覚障がい)では感覚に差があるので、言葉で具体的に伝えて問題を解決していかないといけないんです。たとえば競技中、時速70km近い速度のなかで急に車体がぐらついたとき、原因がわからないと恐怖心でペダリングに躊躇が生まれてしまいます。そういった不安に対して、会話を重ねながらひとつひとつ解消してきました」

——木村選手は競技者であると同時に、楽天グループの特例子会社である楽天ソシオビジネス株式会社に籍を置く社会人でもあります。コミュニケーションや言語化のスキルはどちらにも通じるところがあるのでは?

「その通りだと思います。まず、社会人も競技者もチーム一丸となって目的に向かっていくところは共通しています。そのプロセスにおいて、お互いの考えがずれないようにするためのコミュニケーションが大切ということは、仕事から学んだ部分が大きいと思います」

——これまで培ってきたコミュニケーション力は、木村選手が子どもたちを対象に実施しているパラサイクリング体験会にも生かされているように思います。

「そうかもしれませんね。自分自身、学生時代に参加した体験会をきっかけにパラサイクリングと出会って選手を目指すことになった経緯があります。ですが、体験会を積極的に行っている大きな理由は、スポーツを通じて“もっといろんな物事に挑戦できる”ことを知ってもらいたいからです。夢や目標は自分が知る範囲からかたちづくられていくので、はじめて触れる体験から何かしらの気づきを得てくれたらという思いで続けています」

盲学校に3年間通った実体験から、木村選手は「障がいを持つ子どもはあたらしいモノ・コト・ヒトに触れる機会が少ない」と感じるのだそう。

——体験会で自転車競技のおもしろさを伝えることで、“自分も選手を目指したい”という子どもが現れたら?

「もちろん大歓迎です! 自分も次世代の発掘や育成を考える年齢ですから。それに僕が自転車競技の選手になったときにはタンデム種目の日本人選手がほとんどいなかったので、どうやって強いペアをつくりあげるのかなどの情報がなかなか入手できなかったんです。なので、これまで自分が得てきた知識や経験を次につないでいきたい気持ちがあります」

——楽天グループが掲げる指針「Sports for Everyone」には、だれもが自分らしくスポーツを楽しむ環境やダイバーシティを創出したいという想いが込められています。木村選手はスポーツにどんなパワーがあると考えますか?

「スポーツにはまわりを巻き込むパワーがあって、それによってたくさんの人と接することができたり、自らの世界をさらに広げてくれたりするところに魅力を感じます。だからこそ、“知らないから”、“できないから”と消極的にならず、スポーツを通じて新たな選択肢に挑戦する楽しさを知ってもらえたらうれしいですね」

アスリートのパフォーマンスが年齢とともに低下していくのは避けようのないこと。しかし、情熱が消えない限りその道は終わらない。スポーツを通じて広がる未来に向けて歩む、木村選手のこれからに注目したい。

INTERVIEW&TEXT:Keisuke Honda
PHOTO:Teppei Hori
EDIT:Yohsuke Watanabe, Satoru Komura (IN FOCUS)

  • パラサイクリング
    木村和平

    1996年生まれ。北海道帯広市出身。楽天ソシオビジネス所属のパラサイクリングMBクラス(視覚障がい)日本代表選手。2018年「パラサイクリングトラック世界選手権」で国際大会に初参戦以降、数々の大会で好成績を残す。2023年「アジア選手権トラック」では出場3種目すべてで金メダルを獲得。2024年、「パリ2024パラリンピック」に出場し、1kmTTで6位入賞を果たす。

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