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「いまの自分があの頃に比べて見劣りしてしまう」。世界を経験した酒井高徳ならではのストイックな課題感。

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プロ意識を高く持ち、自分に厳しく努力を続ける。名だたる選手が在籍するヴィッセル神戸の中でも、酒井高徳選手はその印象が特に強い。彼はなぜここまでストイックに高みを目指し続けられるのか。そこにはチームを優勝へと導く強い意志だけでなく、ドイツでの経験を通じて感じたという日本サッカー界全体への熱い思いがあった。

日本代表として2014、2018年のワールドカップに出場し、ドイツの名門・ハンブルガーSVではキャプテンを務めた実績を持つ酒井選手がヴィッセル神戸に加入したのは2019年。以降は、その実力とタフな精神力でチームの屋台骨として活躍している。

2021、22年には全試合出場という優れた結果を残しながらなお、努力を怠らない。そこにはプロフェッショナルであり続けるための彼らしい意識がある。

「常に準備ができていることがプロフェッショナルだなと思います。どんな状況、どんなタイミングでも自分がしっかり100%のパフォーマンスを発揮できること。それを継続的に怠らない人。例えば(自分のコンディションが)良い時、または悪い時にやるべきことをやること、努力をすることは誰にでもできます。ただ、良くも悪くもない時に、人間は辛くない方法やラクな道を選んでしまいがちです。そういう時にこそ努力できること。僕自身も安定している時こそ気を抜かないように意識しています」

現状に満足することなく高みを目指し続けられるのは、自分に足りないものを持っている選手を目標にしてきたから。幼少期から「まわりに比べて上手じゃない」と思ってきた分、研究と努力を惜しまなかった。

「サッカーを始めた頃から、うまくなりたい、自分の選択肢を増やしたいという思いが強かったので上手な子をいっぱい見ていっぱい感心していたんですよね。『この人上手だな。あの人のこのプレーはすごいな』とか。その考えはいまも変わりません。これはきっとサッカーの世界に限った話ではないですよね。ファンの方々にも、もし社会で目標を見失いそうな時には実践してみてほしいです。どの業界にも絶対に自分より優れた部分を持った人がいると思うので、そういう人をモチベーションにすることで高い意識を持つことができる。自分のストロングポイントには自信を持っていいと思いますが、苦手な部分やできないことを真摯に受け止めて、知識が足りなければ勉強する、技術がなければ練習する。それが積み重なることで成長していけるのではないでしょうか」

年齢を重ね、実績を積み上げても衰えることのない向上心。だからこそ、2022年シーズンを終えたとき、現状に満足してはいけないとの思いがこみ上げた。

「日本の空気に慣れてしまったところがあったので、自分をもう一度高めないといけないなと。日本のレベルが低いということではなく、きれいなサッカーをすることが優先されてしまうことで、スローテンポで試合をしてしまう部分がある。そこがドイツとの違いで、僕はハイテンポのサッカーを経験したことで、いまの自分があの頃に比べて見劣りしてしまうなと感じることがあったんです」

海外の選手たちが持っている力強さやスピード感。これはゴールへの貪欲さであり、勝利への執念と言い換えることができる。

「世界と比較した時にもっとベースの部分、サッカーというものの本質が高まっていかないといけないなと感じています。サッカーの一番の本質はゴールを奪うこと。海外の選手たちはそこを惜しまずにやりますし、その迫力が日本との違いなのかなと。Jリーグはもちろん日本サッカー全体の発展を僕は担っていきたいと思うし、自分が持っているもの、(ドイツで)感じてきたものをどんどん体現して還元したいなと思っています。ドイツでやってきたらこれだけできるんだという違いを、チーム、そしてJリーグの選手たちに見せていきたい」

酒井選手が示し続けるプロフェッショナルな姿。世界の舞台で身につけてきた技術と迫力のあるプレーをピッチ上で発揮するその背中が、ヴィッセル神戸、そして日本サッカー界のレベルを引き上げることにつながっていく。

TEXT: Chiharu Abe

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