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年間143試合を支える「食」の力。楽天イーグルス管理栄養士の金剛地舞妃さんが語る、体づくりと食事の大切さ

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プロ野球選手が試合で高いパフォーマンスを発揮するために、食事は欠かせない重要な要素のひとつ。楽天イーグルスで選手たちの食事を支える栄養士・金剛地舞妃さんに、年間143試合を戦い抜くための食事術、そして食がつくる“いい未来”について話を聞いた。そこには、スポーツ選手だけでなく、わたしたちの日々の暮らしにも通じるヒントがあった。

――「管理栄養士」とは具体的にどのようなお仕事をされているんですか?

「選手たちの食事のサポート全般ですね。一軍と二軍、どちらも担当しています。試合前や後のスタジアムで食べてもらうメニューを考えたり、補食の準備をしたり。食事面から体づくりのサポートを行っています」

――選手たちから人気のメニューを教えてください。

「『試合前は鶏肉を食べたい』という意見が多いので、遠征先でも鶏肉料理は必ずメニューの中に入れています。特にチキングリルは人気です。試合前はゆっくり食事の時間が取れないこともあるので親子丼も好まれます。鶏肉と卵が入っていてたんぱく質も豊富なので、栄養のバランスもとりながらしっかり食べられますからね。副菜ではポテトサラダなどをみんな好んで食べています」

楽天モバイル 最強パーク宮城に隣接するクラブハウスの食堂で、食事について語る金剛地さん。語り口は柔らかくとも、その言葉には信念を持った強さがあった。

――楽天イーグルスに所属する前は、ラグビーチームの栄養士を務められていたんですよね。プロ野球選手とラグビー選手では食事面でどんな違いがありますか?

「ラグビーは週に一度試合をするのが基本ですが、プロ野球は約半年間、ほぼ毎日試合がありますよね。このことにまず一番驚きました。長いシーズンを戦うためには、たとえ試合前でもうどんやバナナのようなエネルギー源だけの食事では、ほかの栄養素が足りなくなってしまうんです。特にたんぱく質は体をつくるうえでとても大事な栄養素。だから時間がなくてうどんだけを食べる場合でも、温泉玉子を入れるなどの工夫をしてもらえるよう声かけをしています」

――試合直前の食事も普段とは違う大切さがあるのですね。

「特にプロ野球選手はそうですね。わたしも最初はわからないことだらけでしたから、監督、コーチ、ベテラン選手にも教えてもらって、どのような食事が必要なのかをとにかく考えました。ラグビーチームでの経験と照らし合わせつつ、体を強化しながら143試合の長いシーズンを戦い、活躍するための食事はなにか、いまも試行錯誤しています」

――アスリートの食事を考えるうえで、心がけていることはありますか?

「まず大切なのは口に入れてもらうこと。選手には、疲労や夏バテで食事が進まないときでも、アイスクリームやプリンなど、牛乳や卵を使った栄養価が高く食べやすい食品を活用し、少しでもエネルギーや栄養を補給するよう伝えています。それができたらたんぱく源や野菜を食べる、というように優先順位をつけることも大切。献立を考えるときも、栄養に配慮しつつ食べたくなるもの、食べやすいものを出すことを心がけています。まずは食べることを楽しんでほしい。食事環境を整えるのもわたしたちの仕事のひとつです」

食堂のホワイトボードに書かれた金剛地さん直筆のメニュー。日々写真と共に更新しているという。

――たんぱく質はやはり積極的にとったほうがいいんですね。

「そうですね。筋肉に限らず髪や骨など、体は常に新しく生まれ変わっているんです。その際に必要となるのがたんぱく質なので、常に一定量が体内にあることが重要です。試合やトレーニングで筋肉に負荷がかかり、回復が促されるタイミングでは特に必須ですが、それ以外でもこまめに摂取していくことが大切です」

――それはスポーツ選手に限らず、必要なのでしょうか?

「アスリートは筋肉量も運動量も多いので必要量が多く、摂取するタイミングも重視されますが、どんな人でもたんぱく質が常に体の中にある状態が重要なんです。まずは1日の必要量がとれていることが大切ですが、トレーニング習慣のある方はトレーニング後や就寝前も重要です。そして、寝ている間にたんぱく質を使って体の修復が行われるので、朝には体内にほとんど残っていない状態。だから朝食をしっかり食べて補給することが大切なんです」

――栄養士として、もっとも大切にしていることを教えてください。

「選手を知ることですね。ポジションなどはもちろんですが、どのような体を作りたいのかなど、それぞれの選手の考えや背景を知らないと的確なアドバイスはできないですし、ベストなメニューを提案できない。だからこそ日頃からできるだけ練習を見て、選手本人だけでなくコーチやスタッフの方々ともコミュニケーションをとって、何が必要なのかをいつも考えています」

補食についてもわかりやすくまとめることで、選手の興味を惹くよう工夫しているという。

――楽天グループでは「スポーツとともに、もっといい未来へ。A BETTER FUTURE TOGETHER」というスローガンを掲げています。金剛地さんは栄養士の視点から、スポーツでどのような“いい未来”がつくられていくと考えていますか?

「スポーツは体が資本ですから、スポーツを突き詰めることは、食事を突き詰めることにつながると思っています。食事はアスリートだけが必要なわけではなく、生きている人間みんなに必要なものですから、その重要性を伝えていきたいです。また、選手たちにも自らの経験をどんどん伝えてほしい。トップアスリートの多くは、栄養学を勉強していなくても、自身の経験から、必要なものや体に合うものを自然とわかっているんです。そうやって学んだ知識を次の世代へ伝え、広げていけば、多くの人の健康や心の豊かさにつながると思います。それがわたしの考える“いい未来”です」

――未来を作っていく子どもたちに食事をどのように楽しんでもらいたいですか?

「食事がもたらす作用は、栄養素がすべてではありません。体をつくるだけでなく、人とのコミュニケーションを円滑にしたり、心の状態を落ち着けたりと、さまざまな効果があるんです。時間や気持ちも共有できるのが食事。ただ食べるのではなく、食事を通して誰とどのように時間を過ごすのかも大切にして、楽しんでもらいたいです」

143試合を戦い抜くための体と心を支えている毎日の食事。その裏には選手たちを見守りながら考え、支える栄養士たちの努力がある。そして、人が生きるうえでも食事は欠かすことができない。健康であるために。大切な人との時間を豊かにするために。いま目の前の食事を大切に味わうことも、“いい未来”をつくることにつながっていく。そんなことをあらためて知ることができた。

INTERVIEW & TEXT:Chiharu Abe
PHOTO:Hayato Kubota
EDIT:Satoru Komura (IN FOCUS)

  • 楽天イーグルス
    金剛地舞妃

    仙台大学卒業後、大学助手、森永製菓株式会社トレーニングラボなどを経て、ラグビーチームのサントリーサンゴリアス(現東京サントリーサンゴリアス)で栄養管理を担当。2024年からは楽天イーグルスの管理栄養士として、選手の食事面や体づくりのサポートを行っている。

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