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プレイヤーから営業マンに。転身を決意させたのは現役時代に育んだ“愛着”だった。アスリートのセカンドキャリア vol.2 – 元楽天イーグルス・高田孝一(楽天野球団 営業部)

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2020年のドラフト会議で2位指名を受け法政大学から楽天イーグルスに入団した高田孝一さんが、2024シーズンをもって現役を引退した。わずか4年の現役生活。それでもユニフォームへの未練はなく、いまは楽天野球団の営業部で働いている。球団を支える一員として新たな喜びややりがいを感じながらチームのために走り回る日々。引退してから半年ほどしか経っていないが、その仕事ぶりはすっかり板についている。

スーツ姿はまだ少し新鮮。インタビューをお願いすると、見慣れた笑顔で名刺を渡してくれた。食事に気をつかい、体形も現役時代と変わらない。しかし表情はすっかり営業マンになっていて、あたらしい人生を前向きに歩き出しているのが伝わってくる。

プロスポーツは結果がすべて。楽天イーグルスでの4年間、思うような結果を出すことができず戦力外通告を受けた。そのときには、「納得半分、悔しさ半分」だったという。その約1カ月後に受けたトライアウトで感じたのは、「プロ野球選手として続けていくのは厳しいかもしれない」という現実だった。それでもプロの世界で、できることをすべてやってきたというその過程が、現役への未練を断ち切った。

球団からはバッティングピッチャーやアカデミーコーチなど、ユニフォームを着る仕事も提案された。それでも高田さんは選手を陰ながら支えたいと考え、球団職員の道を選んだという。楽天イーグルスへの恩返しの思いと、4年間過ごす中で好きになったという東北への愛着が決め手だった。営業部を希望したのは、いろいろな企業の人と出会えるから。いまは法人を中心とした年間シートを販売している。

現役時代は「活躍すれば関係ない」という思いが正直なところで、引退後のことはまったく考えていなかった。だが現役生活を終えて自身と向き合ったとき、少し先の未来を考えた。「指導者にはならないだろう。だったらいつかではなく、いまから社会のことを学びたい」。大学卒業後にプロ入りし社会人を経験していないからこそ、引退後の希望として「野球以外の方とのつながりをつくりたい」、「社会人として揉まれたい」という思いが強かったという。

どんなメリットがあれば契約してもらえるか。相手企業のことや楽天イーグルスの魅力、イベント内容をしっかり把握しないと提案もできない。時間をかけて準備した提案がうまくいったときの達成感は格別なのだとか。もちろん断られることもあるけれど、「あまり落ち込まない」と笑う。

「プロの世界にいたときのほうが心の波は大きかった。いまは『難しいな』というニュアンスのほうがしっくりきますね」

プロはもちろん、高校、大学と勝負の世界で生きてきた強いメンタルが、立場が変わったいまにも活きている。

「頼もしいですよ」と語るのは高田さんの上司にあたる営業部部長の石井田昌彦さん。入社から2カ月ほど経ったころにはすでにひとりで営業に行っていたそう。

応援していた選手が部下になることに戸惑いもあったというが、「仕事を吸収しようという思いがすごく伝わってきますし、何より根底にある明るい性格と高いコミュニケーション能力で営業部にもすぐに溶け込みましたよ」と高田さんの成長に目を細める。

持ち前の明るさはもちろんだが、スポーツで培った向上心が高田さんのセカンドキャリアを支えている。「結果に左右される世界で生きてきたので、結果を出したいという気合いはあります。足りない知識や経験はこれからつけていかなくてはいけませんが、仕事に対する熱量の高さはすごくありますね」

写真左が営業部部長の石井田昌彦さん。高田さんのセカンドキャリアを優しく支えてくれている。

入社当初はまずパソコンの使い方で戸惑った。その後も話し方や電話対応など学ぶことはたくさんあったが、はじめて経験するすべてが勉強であり、新たな学びは成長している証拠。慣れない仕事に戸惑いながら、それでもすべてが心地よい疲労となっていた。

次なるステージでも物怖じしないその姿はさすが元プロ野球選手と思わせるが、高田さんは現役時代をこう振り返る。「プロでは自分が信じてやってきたことを貫けなかった部分もあるんです。結果を求めていろいろなことを試していくうちに迷走してしまった。だからこそ、スポーツに打ち込む子どもたちには自分が信じたこと、自分の芯を持ってやり抜いてほしいですね」。

多くのアドバイスや情報は新たな視点や気づきを与えてくれるが、迷いを生むこともある。さまざまな情報があふれているからこそ、何が正しいのかを判断するのは難しい。情報を活かしつつ自分の信じたことを貫く強さが求められることを4年間で痛感した。その経験があるからこそ、社会に出たいま、力強く成長を続けているのかもしれない。

高田さんが思い描く夢は「優勝する瞬間と優勝パレードを見ること」。選手としては叶えられなかったが、かつてのチームメートたちがきっとその夢を実現してくれる。そのために陰ながら選手を支えていくことが喜びでもある。

「営業は知恵と知識と引き出しが大事」。多くの引き出しが必要となる営業活動だからこそ、1年目のいまはもどかしさを感じるシーンもあるという。経験を重ねることで楽天モバイルパーク宮城の魅力やイベントをさらに深く知り、幅広い提案ができるようになる。「もっと知識があれば別の提案ができたのに」と感じることも。その悔しさを成長の糧にしたいと意気込む姿を見た石井田部長は「伸びしろしかないですね」と今後の活躍にも期待を寄せている。

「めちゃくちゃ楽しいですよ!」と語るその目は現役のころと同じように輝いている。

TEXT:Chiharu Abe

PHOTO:Hayato Kubota

EDIT:Yohsuke Watanabe, Shiori Saeki (IN FOCUS)

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