トライし続けた先で、武藤嘉紀が見つけた答え。「失敗することがいい経験だ」
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22歳で海を渡り、ドイツ、イングランド、スペインと、言葉も文化もサッカースタイルも異なる国で活躍してきた選手がヴィッセル神戸にいる。武藤嘉紀選手は、なぜ常にチャレンジングな環境へと身を置いてきたのか。そして、そこでいかに結果を残してきたのか。壁に向き合い、それを越えた先にしか、きっと成長はない。
22歳で海を渡り、ドイツ、イングランド、スペインと、言葉も文化もサッカースタイルも異なる国で活躍してきた選手がヴィッセル神戸にいる。武藤嘉紀選手は、なぜ常にチャレンジングな環境へと身を置いてきたのか。そして、そこでいかに結果を残してきたのか。壁に向き合い、それを越えた先にしか、きっと成長はない。
2023年に開催されたワールドカップを見て、その場にいられない悔しさがこみ上げたという武藤選手。
「サッカー選手である以上、あそこを目指していたし、これからも目指していきたいんです」
そしてこう続けた。
「そのためには結果が非常に重要になってきます。だからこそトレーニング方法を変え、いろんな工夫をしてさらに自分を成長させたいと思っています」
現状に満足することなく努力を続ける。その姿勢は若い頃から変わらない。慶應義塾大学在学中にFC東京に入団。2年後にはさらなる高みを求め、海外へと活躍の場を移した。しかし生活スタイルもまったく違う環境では、サッカー以外にも克服しなければならないことが多かった。
「ドイツではみんなライスの代わりにポテトを食べるんです。ライス好きの僕にとっては大変でした。イギリスでもその土地の食文化に慣れるのに苦労しましたし、それにあそこは雨が多いから気分が上がらないことも。言語はもちろん、そういった文化や環境面でも難しさは感じました」
置かれた環境に順応せずにベストなパフォーマンスを出すことは難しい。さらに生活に慣れるだけではなく、チームに馴染む必要もある。実力社会ではあるが、サッカーはチームスポーツ。フォワードというポジションはパスをもらわなければゴールに辿りつかない。結果を残すにはチームからの信頼は不可欠となる。海外に渡り、よりコミュニケーションの重要性を感じた。
「自分からチームに溶け込むためには、まず『面白いやつだ』と興味を持ってもらわないといけないと思い、おどけてみたりもしました。もちろん恥ずかしかったですよ(笑)。でも、そうすることで話しかけてもらう機会も増えましたし、やりたくないことも、自分へのリターンがあるならやらなくてはならないということを学びました。サッカーは一人でできる競技じゃない。『こいつのためなら頑張ってやろう』と思ってもらえる選手じゃないとやっぱり難しいと思う。サッカーの能力以外のところでもなんとかチームに溶け込もうとトライしましたね」
トライ。その言葉を武藤選手は何度も口にした。海外でプレーすること、結果を残すことは容易ではない。もちろん多くの挫折も味わってきた。それでも前を向き、トライを続ける。その強さはどこから来るのだろうか。
「多くの失敗を経験しているからじゃないですかね。何度も何度もトライして、たとえそれが失敗だったとしても成功した時にはより大きな喜びを感じることができる。その経験があるから失敗を恐れなくなった。海外に行って身につけた大きな財産は、“失敗することがいい経験だ”と思えるようになったことなのかな」。
どんな状況に置かれてもぶれない思いがある。
「やるからには、一番を目指す。そして、トライすること」
2018年のサッカーW杯では日本代表として活躍。2021年のヴィッセル神戸加入後は主力として試合に出場し続ける武藤選手は、年齢を重ねたいま、さらなる高みへと自身を追い込もうとしている。
「30歳を超えるとフィジカル面での衰えや、体力的にも走れなくなると言われています。だからこそ逆に、30歳を超えて『武藤はまた進化したな』と言ってもらえるような選手でいたい」
自身の才能に甘んじることなく努力し続ける姿はヴィッセル神戸でも一目置かれる存在となっている。ただ、今はもう自分のためだけの努力ではない。
「若手も見ていますから僕ら経験ある選手が誰よりも戦って、労力を惜しまず汗を流して戦い続けなければいけないと思っています。それがチームの底上げにもつながると思いますし、いい結果もついてくるのではないかと信じていますね」。
結果だけではないチームへの貢献度。武藤選手の存在がチームをもう一段高く引き上げてくれるに違いない。
INTERVIEW & TEXT: Chiharu Abe