1. ホーム
  2. インタビュー

ヴィッセル神戸と団長安田(安田大サーカス)の30年。サッカーとお笑いにはステキな共通点がある?

サムネイル

スタジアムのピッチも、バラエティ番組の中も、プロたちにとっては同じ戦いの場。地道な練習が結果につながる。身体を張った芸風でお茶の間に笑いを届けてきた安田大サーカスの団長安田(以下、団長)さんは、アスリートとお笑い芸人の共通点をそう語ってくれた。ヴィッセル神戸設立前からの古参サポーターにとって、サッカーとはどのような存在なのか。お笑いとサッカーの関係を、ユーモアたっぷりに話してもらった。

——​​​​団長さんは子どもの頃からサッカーが好きだったとのことですが、サッカーとの出会いを教えてください。

「小学1年生の頃だったかなぁ……?家の近くにキリスト教の教会があって、そこで子どもたちが集まってサッカーをやっていたんですよ。それを見ていたら『楽しそうだしオレもやりたいな』と思ってチームに入ったのがきっかけです。それまでサッカーのことはほとんど知らなかったので、本当に興味本位ですね(笑)。そこから高校まで続けました」

——サッカーの存在は、自身の人生にどんな影響を与えたと思いますか?

「忍耐力と身体の土台を作ってくれたところでしょうか。当時は根性論が通用する時代でもありましたし、厳しい練習も経験しました。水も飲めずに陸上競技場をずっと走らされるみたいな練習です。いや、ボール蹴らしてくれよって(笑)。でも、そこで打たれ強くなったことで忍耐力のある芸人になれました。テレビの企画ではありますが、24時間自転車生活を送ったり、雪山なのに半袖でクイズに答えたりっていうのは、厳しいサッカー(?)の経験があったからできるようになったことなのかな(笑)」

——​​​​もしもプロのサッカー選手になっていたら、どんな選手だったと思いますか?

「ピッチを走りまくって、いろんなところに顔を出して身体を張って戦う選手。目立たないけれども貴重な存在ですよね。自分の芸風とも合っている気がします」

——​​​​ヴィッセル神戸を好きになったきっかけは?

「Jリーグがはじまった当初、兵庫県内にJリーグクラブはありませんでした。僕の地元である兵庫県にJリーグクラブがないのは寂しいなと思っていたところ、当時岡山にあった川崎製鉄(現・JFEスチール)水島サッカー部を、神戸に誘致する活動がはじまって、そこにお手伝いとして参加したのがきっかけです。だからもう30年以上前のことですよね」

——クラブ誕生の前から関わられていたとなると、思い入れも並々ならぬものがありますね。

「阪神・淡路大震災が起きて、街中がメチャクチャになってしまったところからチームが始動しました。僕にとっては、神戸の街とともに成長していった復興の象徴です。チームがこれからはじまるという時期に震災が発生して、『ヴィッセル神戸、なくなっちゃうんじゃないの?』とみんなが不安を感じていたと思います。でも、日本中の人が手を差し伸べてくれて、選手、スタッフ、ファン・サポーターの全員で危機を乗り越えて、ついにチャンピオンまで辿り着いた。ここまでの道のりを思うと感慨深いです」

——​​​​団長さんご自身は、30年前どんな夢を抱いていましたか?

「芸人になりたてで、右も左もわからない感じでした。実は阪神・淡路大震災で友人を亡くしているんです。20歳の時でしたが、友人の死を目の当たりにして『後悔しないように、人生やりたいことやらなあかん』と思って芸能界に入りました。芸人として売れるか売れないかみたいな不安はもちろんあるけれど、それでも死ぬことより怖いものはないだろうと思いました。友人が経験した恐怖に比べれば、売れないなんて小さなことです。やりたいことを全力でやろうと、芸人として生きていく覚悟を決めた時期ですね」

——自身の芸人としてのキャリアを、この30年と重ねてみるといかがですか?

「ヴィッセル神戸と同じで、紆余曲折あったというか、波乱万丈だったと思います。いまだからこそ話せるようなことがたくさんありました。若手の頃にテレビの企画で、南米の国境を裸で渡ることになって、本当に裸になっていたら地元警察に捕まってガチの牢屋に入れられましたね(笑)。動物園の檻みたいなところで、土嚢袋を敷いて寝ろって言われて。脱走したら撃つぞとか脅されました。このままじゃロケにならないってことで、守衛さんにお金を渡したら、『ありがとう、お気をつけて!』みたいな感じで送り出されました(笑)」

——すごい経験ですね……。

「もうホンマにメチャクチャですよ。コンプライアンスなんて言葉もない時代ですから。これもまぁ、昔サッカーをやっていたから耐えれたのかな、なんて思ってます(笑)」

——​​​​お笑い芸人とアスリートに共通点はあると思いますか?

「日々の地道な練習が結果に結びつくというのは、芸人もアスリートも同じなのかなと思います。たとえば賞レースで結果を残そうと思ったら、ストイックに努力しないといけません。ボケのタイミングとかツッコミの間とかって、本当に0.何秒を突き詰めていく世界なんです。昔はストップウォッチを持って練習していましたし、まるでアスリートのようですよね。あとはステージとかひな壇に上がった時は、サッカーで言えば本番のピッチと同じです。ライバルを押しのけてでもボケるのはストライカーが強引にシュートを打つのと似ていますし、一方で現場を盛り上げるために芸人同士で協力して笑いを取る瞬間はチームプレーだなって思います」

——今後のヴィッセル神戸への期待を教えてください。

「まだまだ遠いかもしれませんが、世界一っていうのは期待してしまいますよね。もちろんその過程ではアジアチャンピオンも欠かせないのですが、いつの日か世界一になってほしい。30年前は日本一になることだって夢のようなことだったわけですから、未来はわからない。クラブ誕生に関わった者として、ぜひ世界一になる瞬間を見届けたいです」

——スポーツ選手を志す子どもたちにメッセージをお願いします。

「スポーツには学べることがたくさんあります。我慢して成長を志すこと、仲間と喜び合うこと、声援に背中を押されること。もちろん結果が大事ではあるのですが、それまでのプロセスも重要で、1位の選手には1位の物語が、100位の選手には100位の物語があって、全員が主役になれる。喜びも悔しさも、すべて人生の一部なので、それをいっぱい経験できるスポーツって素晴らしいなと思いますね」

取材を行った8月2日、30周年記念チャリティーマッチのトークショーにも登場した。

INTERVIEW&EDIT:Yohsuke Watanabe (IN FOCUS)
TEXT:Kodai Wada
PHOTO:Hiromi Okubo

  • 安田大サーカス 
    団長安田

    1970年生まれ、兵庫県西宮市出身のお笑い芸人。2001年にHIRO、クロちゃんと安田大サーカスを結成。高校まではサッカー一筋で鍛えた忍耐力で、今なお若手芸人と一緒に身体を張って活躍中。最近は防災士の資格も取得し、阪神淡路大震災の被災経験を講演会を通じて、防災活動に力を入れている。

Share

Share

おすすめの記事

  • バナー
  • バナー

Choose your language for syncSPORTS by Rakuten

Our services are provided within the region and laws of Japan

We provide translations for your convenience.
The Japanese version of our websites and applications, in which include Rakuten Membership Rules, Privacy Policy or other terms and conditions, is the definitive version , unless otherwise indicated.
If there are any discrepancies, the Japanese version shall prevail. We do not guarantee that we always provide translation. Certain features or messages (including customer services) may not be available in the selected language.​

Read usage guide

syncSPORTS by Rakuten!

当社のサービスは、日本国内において提供されるものであり、地域および法律に基づいています。
当社のウェブサイトおよびアプリケーションの日本語版は、原則として、楽天会員規約、プライバシーポリシーその他の規約を含む、正式なバージョンです。
翻訳は便宜上提供されているものであり、翻訳に相違がある場合は、日本語版が優先されます。
翻訳を常に提供することを保証するものではありません。特定の機能やメッセージ(カスタマーサービスを含む)は、選択した言語では利用できない場合があります。

利用ガイドを読む

人気のタグ

すべてのタグ