数字で見ると“ヤバさ”がわかる!NBAビギナーズガイド by 佐々木クリス
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東西両地区合わせて全30チーム、レギュラーシーズンのゲームに出場できる登録選手数は1チームあたり15人と上限が決まっているNBA。世界最高峰のリーグで活躍する450人のトッププレーヤーのなかで、今だれに注目したらいい?今回はバスケットボールアナリストであり解説者の佐々木クリスさんによる“データ視点”から注目選手をピックアップ。驚きの数字を知れば、「この選手のここがヤバい」はだれでも簡単に理解できる!
まずは、今のNBAを楽しむために必ず押さえておくべきこの2人から。NBAファンならだれもが知っている、ステフィン・カリーとレブロン・ジェームズ。「この2人のパフォーマンスをリアルタイムで観られることはプロの解説者としても、いちNBAファンとしても幸せなこと。もはや別格です」と佐々木クリスさんがいうほどの選手にはどんな数字があるのだろう。
268試合連続で3Pシュート成功!GSWのステフィン・カリー
ゴールデンステート・ウォリアーズのエースであり、NBA歴代最高の3ポイントシューターとして名高いステフィン・カリー。彼の登場はこれまでの3ポイントシューターのイメージを根底から覆したといわれるほどの影響力をもつプレーヤー。
そんなカリーは2018年から2023年12月まで毎試合、ゲーム数でいえば268試合連続で3ポイントシュートを成功させるという脅威的な数字を樹立。もちろんこれはNBAのなかでダントツ。ちなみに同記録における現在の2位もカリーで、その数は157試合連続となっている。
「多くの3ポイントシューターというのは、いかにいい位置で味方からのパスを受けてシュートを打つかがメイン。でもステフ(ステフィン・カリーの愛称)はそれに加えて、自らのドリブルによって相手を翻弄し、そのまま3ポイントを打つこともできます。その両軸から生まれるバランス感と無尽蔵のスタミナが、彼を絶対的な存在へと押し上げているんです」
そして、今までのレギュラーシーズンでカリーが3ポイントシュートを成功させた数も歴代最多の3,568本!NBAにおけるほぼすべての3ポイント記録を所持する彼が現役である限り、数字はさらに伸び続けていく。
NBA歴代最多40,000得点目前!LAレイカーズのレブロン・ジェームズ
「プレースタイルの好みもあるだろうけれど、僕はNBA史上最高のプレーヤーといっていいと思う」と佐々木クリスさんが絶賛するロサンゼルス・レイカーズのレブロン・ジェームズは、だれにでもわかりやすく、そして凄まじい功績を上げている選手。
1989年に名プレーヤーとして名高いカリーム・アブドゥル・ジャバーが残したNBA最多38,387得点の記録。この偉業は30年以上破られることがなかったが、2023年2月、ついにレブロン・ジェームズが更新。2024年1月23日現在で39,643点まで記録を伸ばすレブロン。前人未到の40,000点まであとわずか。
今年で40歳を迎えるレブロン・ジェームズは現役最年長のプレーヤー。しかし“king(王様)”の愛称にふさわしい活躍ぶりはまだまだ健在。1試合平均25点をマークする。
「2011年から2020年までの10年間で、レブロンはチームを9度のNBAファイナルに導いています。ちなみに2011年から2018年までは連続出場なので、彼の牽引力がいかに優れているかわかると思います。また、レブロンは自らの肉体を維持するためにトレーニング費などに年間約1.5億円を費やしているといわれていて。素晴らしいパフォーマンスを長く継続できる理由もやはり規格外ということです(笑)」
キャリアもさることながら、知名度も圧倒的なレブロン・ジェームズ。インスタグラムのフォロワー数はなんと1.5億人。これはNBA選手内でNo.1、全世界のアスリート内でもトップクラスの数字になる。
「NBA Rakuten内に、2023年でもっともSNSを視聴されたNBA選手ランキングという記事があって。それによるとレブロンは1位で、通算28億回だったそうです。世界中が彼の言動や動向を気にしているという証ですね」
トリプルダブル117回は歴代4位!デンバー・ナゲッツのニコラ・ヨキッチ
続いては昨シーズンにリーグ制覇を成し遂げたデンバー・ナゲッツ所属、2シーズン連続でNBAファイナルMVPを受賞したニコラ・ヨキッチ。
「今、現役最強のNBA選手はだれだろうと考えたとき、ヨキッチは間違いなくその一角を担うプレーヤーです」と、佐々木クリスさんは話す。過去5シーズンの間、NBAファイナルMVPの受賞者はヨキッチ以外に、2019年と2020年にミルウォーキー・バックスのヤニス・アデトクンボ、2023年にフィラデルフィア・セブンティシクサーズのジョエル・エンビードの3名のみ。ヨキッチの評価の高さはここからもうかがえる。さらにヨキッチは今シーズンだけですでにNBAの公式記録であるトリプルダブル(※)を12回達成。累計117回は歴代4位で、この数字はレブロンをも上回っている。
※トリプルダブル…得点、リバウンド、アシスト、スティール、ブロックショットの5項目中3項目で2桁以上の結果を残すこと。2項目ならばダブルダブル。この記録は本来、ボールを動かしてゲームを作るガードポジションの選手のほうが達成確率は高いといわれている。
「ヨキッチがすごいのは、得点力やリバウンド力に長けている点はもちろんのこと、同時に超一流のパッサーとしても活躍しているところです。今シーズン、彼がボールに触れた回数は1試合あたり99.3回、パスをさばいた回数は74回。どちらもリーグNo.1の数字を残しています。センターポジションの選手でありながらアシストによってリーグを牽引している無敵のプレーヤー、という具合にヨキッチを観てもらえるとさらに楽しめるはずです」
高いオフェンス力の要!ペイサーズのタイリース・ハリバートン
佐々木クリスさんが「個人的にもっとも注目している」と話すのが、インディアナ・ペイサーズに所属するタイリース・ハリバートン。
「NBAには、100回の攻撃機会でどれだけ得点できるかを示す“オフェンシブレーティング”という指標があります。ペイサーズはこのオフェンシブレーティングで122.4という過去最高の数字を出しました。その中心にいる選手がハリバートンです」
ハリバートンが出場している試合とそうでない試合ではオフェンシブレーティングに9.7近くの開きが生じるそう。つまり、彼が出なければペイサーズはNBAの平均的なチームになってしまうくらいほどの差がある。
「ハリバートンは今シーズン、2試合連続で20得点20アシストを決めています。これはかつての名選手マジック・ジョンソン以来の快挙。もちろんこの記録自体も素晴らしいのですが、実はさらにすごい数字があって。ハリバートンは40回以上アシストをしながら、自身の責任になるターンオーバー(※)は2つしかなかったんです。NBAの解説でもよく話すんですが、アシストとターンオーバーの比率は優秀なポイントガードで2対1、オールスター選手クラスなら3対1くらいです。そんななかで20対1という数字を叩き出したハリバートンはまさにNBAきっての高いオフェンス力を生み出せる選手といえます」
※ターンオーバー…チームがシュートに至るまでにボールを奪われて攻撃権が相手に移ること
鋭いドライブで相手を翻弄!オクラホマシティ・サンダーのSGA
現在、ウェスタン・カンファレンス(※)における1位争いの一角、オクラホマシティ・サンダー。NBAファンたちの予想を上回るほどの躍進ぶりを見せているチームを支えている選手が、SGAことシェイ・ギルジャス・アレクサンダー。
※ウェスタン・カンファレンス…NBAに2つあるカンファレンスのうちの1つ。もう1つはイースタン・カンファレンス。
「NBAには1試合で何回ドライブを繰り出したかという記録がありますが、SGAは22.6回でリーグトップの数字をもつガードポジションの選手。2メートル以上のビッグマンたちのディフェンスを次々と切り裂いていく彼のドライブを観れば気分もスカっとするはずです」
SGAは今シーズン、平均得点31.3点というリーグ4位の記録をもつチームのエース。さらに昨年51.0%だったトータルシュート成功率を54.8%まで上げるなど勝負強さも光る。
「彼がゴールへ切り込めば当然ディフェンスはマークを外すわけにはいかない。でも、サンダーは3ポイントシュート成功率が39.2%とリーグで2番目に高い数字を誇るチームなんです。ドライブを止めようとディフェンスが躍起になると今度は外から3ポイントを射抜かれてしまう、というまさに手のつけようがない状態。そんな攻撃の質が高いチームを牽引しているのがSGAです」
データにない予想外な発想!マイアミ・ヒートのジミー・バトラー
ここまで紹介してきた選手それぞれの“数字”以外にもう1つ、NBAを語る上で欠かせない面がある。NBA選手は試合の際にド派手なスタイルで会場入りすることが多く、NBAランウェイと呼ばれるほどファッション性が豊かだと知られている。なかには実際に海外のランウェイにモデルとして招かれる選手もいれば、一度着た服は着ないと豪語する選手もいるそう。
ジミー・バトラーのInstagram「ファッションが際立つNBA選手のなか、ユーモラスなキャラで目を引くのがジミー・バトラー。NBAでは年に1回、シーズンがはじまる前に必ず運転免許証の証明写真を撮ることになっていて、その写真がNBAの公式素材になります。ジミー・バトラーはそんな大切な写真を撮るときに普段とまったく異なるヘアスタイルをしたり、いつもしないピアスをつけたりしてメディアを楽しませてくれる選手です。趣味のコーヒーから派生した「Bigface」というブランドもやっているので気になる人はぜひチェックしてみてください。ちなみにバスケットボールもちゃんと上手です(笑)」
また、バスケットボールはHIPHOPやスニーカーカルチャーと密接な関係を築いてきたスポーツ。「クリスマスゲームやオールスターゲーム時には選手が新しくお披露目するシグネチャーシューズに注目が集まったり、インスタグラムではNBA公式によるNBAKICKSというアカウントが着用モデルを紹介しています。選手たちの私服以外にも楽しめる要素がたくさんあるんですよ」と佐々木クリスさんがいうように、ファッションの側面からNBAにのめり込む人も少なくない。
「僕が子どもの頃、自宅でNBAの放送が観られるのは週に1回程度でした。それがいまや、いつでもどこでも自分の好きな選手やチームのプレーを見逃さずに観ることができます。また解説として参加させてもらった「NBA JAPAN GAMES」にしても、とても高い熱量を感じました。こうした環境を整えているNBA Rakutenの功績は大きいと思いますし、今後もさらに輪を広げていってほしいと思います。僕としても、バスケットボールという競技にさらにのめり込んでもらえるように、わかりやすくて気づきにもつながる解説を続けていきたいですね」
プレースタイルにもファッションスタイルにも魅力があるNBA。難しく考えずに、まずはあなたが惹きつけられた存在を、思うがままに楽しんでみてほしい。
※本記事内のデータは2024年2月5日時点のものです。
TEXT:Keisuke Honda
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- バスケットボールアナリスト・解説者
- 佐々木クリス
1980年生まれ。アメリカ合衆国ニューヨーク出身。中学生のときに観たNBAのプレーに衝撃を受けてバスケットボールに興味をもつ。2011年から2013年までプロバスケットボール選手として国内チームに所属。また、現役時代からバスケットボールアナリスト・解説者として始動。現在はNBAファイナルの現地取材や選手へのインタビュー、自身のYouTubeチャンネルを通じた情報発信など多岐にわたり活動中。NBAが選ぶアジアのインフルエンサーの1人。著書には「NBAバスケ超分析語りたくなる50の新常識」(インプレス/2022年)など。