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楽天イーグルスの選手寮「泉犬鷲寮」を訪れて。愛情いっぱいの寮長のもと、ここから未来のスターが羽ばたいていく

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選手寮。アスリートが共同生活を送るこの場所は、ファンにとって興味津々の世界。彼らはどんな食事、トレーニング、そしてコミュニケーションを通して成長していくのだろう?以前取材させてもらったヴィッセル神戸「三木谷ハウス」に続き、今回は楽天イーグルス「泉犬鷲寮(いずみいぬわし)寮」へ!

楽天イーグルスの二軍本拠地・森林どりスタジアム泉のすぐ隣にある泉犬鷲寮では、現在27名ほどの若手選手たちが共同生活を送っている。入寮時に食事の時間や門限といった基本的なルールが記されている寮則が配られ、そのルールを守りながら選手として、人としての成長をしていく場所なのだそう。寮長の中村稔さんは「寮則には難しいことなんて何ひとつ書かれていないんです。ただ、なぜそれをすべきかを理解してもらうことが大事」と話す。

中村さん自身もかつてはプロ野球選手。引退後は審判もされていた。

今年4年目になる吉野創士選手も「共同生活ですから人に迷惑をかけないことは意識しています。時間に遅れない、報告を怠らないなど基本的なことですがそういったことが大事。寮生活といっても自分でやらなければいけないことは多いので成長できる場所だなと感じています」と話してくれた。

丼ものを頼むことが多いという吉野選手。「体作りのためにとにかく量を食べなければいけないので」。

「ご飯も美味しいですし施設も完備されていて、自分も成長できるし野球にも集中できる環境」と話す泉犬鷲寮にはどんな施設があり、どういった環境で選手たちが過ごしているのだろうか。その内部を見ていこう。

まずは食堂。アスリートとしての体を作り疲労回復やリラックスにも欠かすことができない食事は、選手たちにとって貴重な時間となる。専門の栄養士が考えてくれているというメニューは、おかずもたくさん用意され、フルーツや野菜も好きなだけ食べられるようなっているのだとか。「いつも美味しい。味付けが豊富なので飽きない」と選手たちからも好評の様子。

献立表を見て、さすがのボリュームに驚いた。アスリートはやはり、これくらい食べないといけないのだ。

栄養士はメニューを一方的に考えるだけではなく、選手たちの食事の様子を見ながら、意見を取り入れることもあるそう。食事量が減っている選手の話を聞いたり、減量や増量に挑む選手へのアドバイスもしている。

取材日はシーズンオフだったこともあり、二軍施設を利用してトレーニングに励んでいる選手も多く、すでに退寮している選手たちも食堂に訪れていた。堀内謙伍選手の姿も。

「寮のご飯は美味しいです。僕はいつも鶏肉と卵料理が多いですね」と堀内選手。筋肉量を増やすことを意識したチョイス。

食堂の隣にある共用スペースのスクリーンにはシーズン中は野球中継が流れており、選手たちが集まって見ている憩いの場でもある。中継中は選手たちから寮長に様々な質問が飛ぶ。昨季ルーキーながら一軍で5勝を挙げた古謝樹選手は審判の特徴などをよく聞きにきたそうで、自身の登板の際に参考にしていたという。いっしょに見る時間は一軍を目指す選手たちにとって学びの場でもある。

将来の活躍をイメージしながら、若手たちはここで試合を分析する。

食事時間のルールや門限がある泉犬鷲寮で唯一24時間使用できるのが、風呂とバッティングセンター。風呂は寮長が早朝3時から掃除をして湯を入れ替え、いつでも快適に使えるようにしてくれている。

また寮の目の前にあるバッティングセンターには2レーンのバッティングマシンが置かれており、ひとりでも打撃練習を行うことが可能。もちろん、寮生でなくても使用できるため、過去には退寮後の茂木栄五郎選手(現東京ヤクルトスワローズ)ら主力選手も早朝に打ちに来ていたそう。

「小郷(裕哉)もよく使用していたね」と笑顔を見せた中村さんには印象に残っていることがある。小郷選手がまだ一軍に定着できずにいたころ、一軍の試合でバントミスが続いてしまった時期があった。そんなとき、試合後に楽天モバイルパーク宮城の室内練習場で打撃練習を行い、寮に戻ってきてからもここでバント練習をしていたという。全試合フルイニング出場を果たした2024年シーズンの活躍に目を細める姿はまるで親のよう。悔しい思いをして、選手たちは成長する。その一助となるのが泉犬鷲寮であり、このバッティングセンター。多くの選手の努力がこの場所に刻まれている。

「朝6時に打ちに来る人もいれば24時ごろに打ちに来る人もいる。音が寮に響くため早朝や夜中はあまり歓迎しませんが、打たせてほしいといわれればもちろん快諾しますよ」と、寮長の中村さん。一軍のナイター終わりに打ちに来る選手も多いという。

バッティングセンターがある建物の隣には外部の人間が立ち入ることのできないトレーニングルームがある。ケガをした選手にとってリハビリの場でもあることから、寮長は部外者厳禁のこの場所を「秘密の部屋」と呼んでいた。オフでも絶え間なく選手たちがやってきて自主トレに励んでいるのだそう。

トレーニングを終えて食事をとっている吉野選手に話を聞くことができた。高校卒業後にプロ入りし、当時は口数が少なかったが、いまでは自分の考えをしっかりと言葉にできている。そこには泉犬鷲寮の環境も大きく影響しているそう。

「寮生活は楽しいですし、充実しています。先輩と接する機会もありますし、多くの方が出入りするのでコミュニケーション能力が上がったなと感じます。特に1年目は自分から話しかけることができなかったんです。でも寮にいると自然といろんな人と会話ができるようになりました。先輩方も優しいですし、僕にとってはすごくいい環境だなと感じています」。

選手同士では野球の話題よりもプライベートな会話の方が多いそうで、リラックスした時間を過ごせているという。一方で24時間使用可能のバッティングセンターにはよく行くそうで、「試合で打てなかったときや調子が悪いときにはフォームや感覚を確認する意味でも使用したりします。結構お世話になっていますね」と野球と向き合う時間も多い。

「選手たちにはあえて全部は教えない。社会人ですから、自分で考えて生活してもらっています」と中村さん。高卒、大卒、社会人卒とあらゆる年齢の選手たちがともに生活を送っているが、全員を大人として扱っている。「野球もやらないといけないし、人間形成も大事なこと。大人になるステップの場」と続けた。

親元を離れて生活する選手たちが思い切り野球に打ち込めるのはこの安心できる“家”があるから。親のように優しく、ときに厳しく選手たちを見守る寮長に自身の活躍を報告することも選手たちのモチベーションのひとつとなっているはず。のんびりとリラックスできる場所である一方で、ここは「強くなる場所」でもある。この環境を結果につなげられるかどうかは自分次第。チームが強くなるためにも若手選手たちの活躍は欠かせない。そしてその一助となるのがこの泉犬鷲寮。次なるスターがここでたくましく成長している。

2024年ドラフト1位の宗山塁選手は出世部屋といわれる1号室に決まった。近年では小深田大翔選手、早川隆久選手、荘司康誠選手らが使用していた部屋。

TEXT:Chiharu Abe
PHOTO:Hayato Kubota
EDIT:Yohsuke Watanabe, Shiori Saeki (IN FOCUS)

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