“両打ち”という武器を磨き、選手会長としても楽天イーグルスを支える田中和基。「『これまでの自分を超えられた』という成績を絶対に残したい」

インタビュー

Posted

2025.06.03

2017年にドラフト3位で楽天イーグルスに入団し、翌年には新人王を獲得。野手としてはチーム唯一の"両打ち"で、高い守備力と俊足も兼ね備えるオールラウンダー。そんな田中和基選手の実力をもってしても、熾烈な争いが続く外野のレギュラーをいまだ掴みきることはできていない。今シーズンの定位置奪取を願う一方で、チームの層の厚さ、充実ぶりを示す状況だけにファンからすると複雑な気分…!?

――2024年からは選手会長を務められていますが、それによってチームの見え方も変化しましたか？

「そうですね。人前で挨拶したり、懇親会のような場に行く機会が増えたことで、球団職員やスポンサーの方々も含め、本当に多くの人に支えられてチームが成り立っているのだと実感できました。みなさんへの感謝の思いがより強くなりましたね」

――立場が変わったことで見えた、楽天イーグルスの魅力はありますか？

「選手会長になったことで、スポンサーの方々もそうですが、ファンの方々のこともよりハッキリと見えるようになりました。視野が広がったといいますか。その存在の大きさにあらためて気付かされました。楽天イーグルスの魅力、それはもう、関わってくださるみなさんの温かさに尽きます」

――今年の楽天イーグルスは若手選手やルーキーが活き活きと活躍されている印象です。プロ9年目の先輩として、彼らにどんな言葉をかけたいですか？

「とにかくがむしゃらにやってほしいです。僕が1〜2年目のころは、先輩方がすごくやりやすい環境をつくってくださっていました。当時は気付きませんでしたが、その環境があったからこそプレーに集中できていたのだと、30歳を迎えたいまになって思います。チームのことは僕らのような年上に任せて、若手選手には彼ら自身のプレーに思う存分専念してほしいですね」

――新人王を獲得できたのも、がむしゃらに専念できる環境があったからこそ？

「そうですね。当時は銀次さん（現球団アンバサダー）や嶋基宏さん（現ヤクルトスワローズコーチ）、藤田一也さん（現DeNAベイスターズコーチ）、今江敏晃さんなど頼りになる先輩方がいて、一軍の試合に出はじめたばかりの僕でもやりやすい環境をつくってくれていました。その背中を見てきたからこそ、次は自分の番なのだと感じるんです」

――田中選手が得意とする外野のポジションでは、熾烈なレギュラー争いが続いています。レギュラーを勝ち取るためにどんなことを意識していますか？

「プロ野球はシーズンが長く、毎日のように試合がありますから、ずっといい状態を続けることが難しいスポーツ。だからこそ、うまくいかないときに、その状況でいかに努力できるか。それによって選手としての価値が決まるんだと意識しています」

――プレーの面で、具体的に強化しようと取り組まれていることはありますか？

「近年は打撃で結果を残すことができず、出場機会も減ってしまったので、オフは特に打撃面の強化に励んでいました。やはり打撃で再評価をしてもらいたいですから。他選手との違いでもある、両打ちの魅力をもっと発揮したいとも思いますが、まずは結果を残すことが大事。どんな練習をやってきたかではなく、結果で応えたいです。ファンの方々に、勝ちゲームをたくさん見せたいんです」

――いつも前向きな言葉と姿勢を見せてくれる田中選手。今年はどんなチャレンジをしていきたいか、チームと個人、それぞれ教えてください。

「チームとしては、多くの方に楽天モバイルパーク宮城に来ていただくことです。球団の方々も観客動員数アップを目標にして日々取り組んでいただいているので、宗山塁選手の活躍も追い風にしながら、僕らも強く意識していきたいです。そのために選手ができることはやはり試合に勝つこと。来てくださるファンの方のために、という気持ちはもちろん大きいですが、たくさん勝つことで観客動員数の増加にもつながるはず。球団が掲げる目標にチームの勝利という形で貢献できたらいいなと思っています。また、個人としては常にキャリアハイが目標。試合数でも、安打数、ホームラン数、盗塁数、どんな数字でもいいので、『これまでの自分を超えられた』という成績を絶対に残したいです」

――楽天モバイルパーク宮城はスマイルグリコパークも併設され、家族連れでも楽しめるスタジアムとして親しまれていますよね。田中選手が個人的にどんなところが好きですか？

「正直、選手目線で言うととても難しい球場なんです（笑）。風の影響を受けたり、雨で芝生が濡れていることもありますし、晴れた日には太陽のまぶしさもプレーに影響します。一方でそれが球場で見てくださるファンの方々にとっては魅力になるのかなと。来るたびに気候や景色が変わり、自然の空気や光を感じることができる。ドーム球場ももちろん素晴らしいのですが、屋外球場だからこその“全試合違う景色”を味わってほしいです」

――最後に、プロ野球選手を夢見てがんばっている子どもたちに向けて田中選手から激励のメッセージをいただけますか？

「自分の“いいところ”を見つけて、そこに自信を持ってください。僕でいうと、それは肩の強さでした。小学生のときにふと見つけて、気付けばプロになったいまも長所としてつながっているように感じます。誰かと比べたり1番になることよりも、まずは自分のいいところを思いっきり表現してほしいですね」

TEXT：Chiharu Abe
EDIT：Yohsuke Watanabe（IN FOCUS）

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