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楽天イーグルスが待ち望んだ不動の遊撃手、村林一輝。スペシャリストよりもレギュラーを目指す質実剛健な野球哲学

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遊撃手(ショート)は、野球の花形とも呼ばれる重要なポジション。しかし楽天イーグルスではそこを任せられる選手がなかなか定着せず、ファンにとっては熾烈なレギュラー争いにワクワクしつつ、そのことが不安要素でもあった。そんな中ついに名乗りを上げたのが、堅実な守備と俊足で外野へ抜けそうな当たりを何度も防いで攻撃の芽を摘む村林一輝選手。ついに不動のショート誕生か?チームがより強くなる兆しに違いない……!

スペシャリストからの脱却

プロ9年目の村林選手は一昨年までの7年間で一軍出場は207試合。そのほとんどが代走や守備固めからの登場だった。その守備の名手が昨季、打撃でのアピールに成功し、今季は開幕からその座を譲っていない。

もちろん、自分の武器に磨きをかけ、スペシャリストとして一軍の戦力になる選手も重宝される。しかし村林選手が目指したのはあくまでレギュラーだった。もともと守備と走塁は一軍レベルで、打撃であとひとつアピールできずにいたところ、昨季は打率.256という好成績を記録。さらに7年間でわずか6だった打点を32とし、得点圏打率も.272とバットでその存在感をアピールした。

「常に現状に満足はしていませんでした。レギュラーを取りたいという気持ちがずっとありましたから。そのために、野球がうまくなるにはどうすればいいかを常に考えていました。まわりを見るのではなく、自分自身がレベルアップすることによって結果につながっていくと信じて、練習に取り組んでいました」。

昨季、打撃での開花のきっかけとなったのは、当時コーチを務めていた今江敏晃現監督からの「真逆のことをやってみたら?」の一言だった。バットを上から落とすイメージで振っていたものをすくいあげるようなイメージにするなど、体の使い方やスイングの軌道を変えてみることで自分にはまるものがあったという。高い守備力を誇るが、それでもレギュラーをつかめないのがプロの世界。攻守走が安定したことがレギュラー奪取への大きなきっかけとなった。

レギュラーにこだわり続けて

「まだレギュラーを取ったとは思っていません」。

そう危機感を口にする村林選手。試合前の練習でも、打撃や走塁のことでコーチと長く話し込む場面も多い。さらに「プロの世界は身体能力が高い人ばかり。フィジカル強化はいまでも続けています」とウエイトトレーニングにも余念がない。昨季から少しずつ長打が増えてきたのも、フィジカル強化が奏功した結果だという。大塚高時代に甲子園への出場経験はなく、ドラフトでは7位で入団。体の線も細く、プロの世界で1年間戦えるレベルではなかった。だがしっかりと土台を作り、練習に励んできた成果が今季、結果として出ている。時間はかかったが、決してあきらめなかった。それはレギュラーへの執念ともいえる。

「悔しさは常にありましたね。試合に出たいという気持ちと一軍のレギュラーを取りたいという気持ちは絶対にありました。現状で満足したら終わってしまうという思いも常に持っていたので、そこはぶれずにできていたかなと」。

最大の武器である守備の面でもおごりはない。何度もファインプレーでチームを救ってきたが、派手なプレーはいらないのだと語る。

「ピッチャーが打ち取ったと思う打球をしっかりアウトにすることを意識しています。ファインプレーは二の次ですね」。

その安定感と正確さが、投手からの信頼を生み、チームからの信頼につながる。捕手、投手、二塁手、遊撃手、中堅手はセンターラインと呼ばれ、守備において重要なポジションを担っている。チームが安定するにはセンターラインが安定することが大切。だからこそ、村林選手の成長はチームにとって大きい。結果だけではなく内野陣をまとめる力も求められるポジションでかかる期待は大きいが、そのことも自覚しながらさらなる成長を誓う。

「ポジションに限らず、試合に出させてもらっている以上はチームに貢献することが大前提。いまはセンターラインを任せてもらっているので、ピッチャーへの声かけや内野陣の連携など、声や姿勢で引っ張っていきたいです」。

勝利のためにさらなる成長を

目標にしているのは福岡ソフトバンクホークスの今宮健太選手だと教えてくれた。不動の遊撃手として常勝軍団を長く支え、打撃と守備力はもちろん、その存在がチームに必要とされている。オフシーズンにはいっしょに自主トレを行い、野球に対する考え方や姿勢も学んできたという。

「試合に出ていて一番うれしいことはチームが勝つこと。まずは勝利のためにプレーしたい。その中でレギュラーを取っていけるようにやっていきたいですね。攻守走すべてにおいてレベルアップし、チームを勝たせられる選手になりたいです」

楽天イーグルスでは長く遊撃のポジションを守った選手はまだいない。目指すところはやはり不動のショート。日々成長を続けながら「必要とされる選手」へとさらなる進化を続けていく。

「野球選手である以上、いつかは三井ゴールデン・グラブ賞を獲りたいですね」。

守備の名手に与えられる称号。だがそれは、レギュラー選手でなくては獲得できない(※)。この目標を実現できたとき、楽天イーグルスのセンターラインにはどっしりと村林選手が立っているはず!

※三井ゴールデン・グラブ賞の内野手の選考資格は、チーム試合数の1/2以上1ポジションの守備についていなくてはいけない。

TEXT:Chiharu Abe
EDIT:Yohsuke Watanabe(IN FOCUS), Shiori Saeki(IN FOCUS)

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