「努力なくしてトップには辿り着けない」。プロバスケ選手、キング開がBリーグの頂点に立って証明したい、父の教え
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もっとできたはず——。今シーズンを振り返り、キング開選手からまず出てきたのは反省の言葉だった。チームとしてBリーグ優勝を志したものの、結果は全体19位(中地区6位)。個人としても納得のいくシーズンは送れなかった。しかし、いつまでも落ち込んではいられない。日本中でバスケ熱が高まる中、来シーズンこそ悲願を達成するために、すでに気持ちを切り替えている。転んでも挫けないキング選手の強さの原点とは?
——まずは今シーズンの振り返りをお願いします。
昨シーズンはチャンピオンシップに進出でき、今シーズンはチームとしてタイトルを狙っていました。しかしながら、なかなか勢いに乗ることができず、最終的には全体19位ということで悔いが残る結果となりました。上位を目指せるチームでしたが、不完全燃焼に終わってしまったところが最も悔しいですね。個人としても、自分の強みであるドライブやゲームメイクの部分で、役割を果たせませんでした。もっとできたはずなのにな、と率直に感じています。ただその一方で、3Pシュートの確率が上がったことや、強化してきたディフェンス面のプレーで力を発揮できたことは、ポジティブに捉えています。今後はそれをチームの結果に繋げていくことが大切だと思っています。
——本来発揮したかった、横浜ビー・コルセアーズのバスケとは?
全員が考えながらハードワークする「走るバスケ」を自分たちの持ち味としていて、そのスタイルはだんだんと確立できてきていると感じます。特に今シーズン最終戦(川崎ブレイブサンダース戦)では、中心メンバーを欠きながらもチーム全員でそれをカバーして、勝利を収めることができました。自分たちがやりたいバスケを体現できた試合だったので、それをシーズン通して発揮できるようにしたいですね。
——来シーズンに向けたご自身の強化ポイントを教えてください。
チャンスメイクをするハンドラーとしての役割を、チームからは期待されていると思うので、そこから点を取ったり、味方を活かすプレーがもっとできたらと考えています。そうすれば、チームの成績向上にも貢献できると思います。オフシーズンはそこを強化していきたいですね。
——キング選手は横浜出身ですが、地元のチームで活躍できる喜びはありますか?
子どもの頃からずっと憧れていたチームで、そこに所属できていることはすごく誇らしいです。「こんな選手になりたい」と思ってがんばってきたので、自分も目標とされるような存在になりたいですし、それがプロとしての責任でもあるのかなと思っています。
——ワールドカップやオリンピックなど、日本中でバスケ熱が高まっていますが、キング選手はバスケ界の発展にどのように貢献していきたいですか?
横浜ビー・コルセアーズでは5人制の試合に出ていますが、3人制(3×3)の日本代表にも選んでもらうことができました。同じバスケではありますが、全く違う種目です。目まぐるしく攻守が入れ替わりますし、魅力的な個人技をたくさん観ることができるゲームです。そうした3×3の魅力も含め、バスケの面白さを伝えていきたいです。
——3×3の経験は、ご自身にとってどのようにプラスに働いていますか?
昨年、一昨年はU23日本代表としてワールドカップやネーションズリーグなど世界の舞台に立つことができました。相手国のバスケのスタイルを学んだり、自分の通用するスキルを再認識したりと、得るものが非常に多かったです。その経験を5人制バスケのプレーに活かしたいですね。
——ご自身のSNSで、もうすぐお子さんが生まれることを発表されました。私生活や、競技に対する意識の変化はありますか?
「自分が家族を守らなきゃいけない」という責任感が芽生えましたし、競技に対するモチベーションも非常に上がっています。僕の父からは「プロとしても父親としても、ここからが大変だぞ」と言われていますが、その大変さも含めて楽しんでいきたい。自分の成長につなげていきたいです。
——音楽好きと伺いましたが、普段はどんな音楽を聴いていますか?
実はいつも聴く曲みたいなものはなくて、その日のテンションによって曲を変えているんです。例えば試合前で気分を上げたいときはRickie-Gさんのポップな曲を聴いたり、しっとりしたいときは藤井風さんの落ち着いた曲を聴いたり。シャワーを浴びるときは、いつも一人でカラオケをしていますね(笑)。父が歌手なので、物心がついたときから音楽や歌が身近にありました。小学生の頃は、将来バスケ選手になるか歌手になるかで悩んだくらいです。もしバスケをやっていなかったら、歌手を目指していたと思います。
——お父さんからかけられた言葉で、心に残っているものを教えてください。
ひとつの言葉というよりは、生き方そのものを教えてもらいました。小さい頃から「バスケ選手でも歌手でも、人並み以上に努力をしなければトップレベルにはなれないよ」とずっと言われてきました。父はアメリカ人ですが、日本で歌手活動をするために必死で日本語の勉強をして、今では日本人歌手のバックコーラスなどをやっています。そんな姿を見てきたからこそ、僕も現状に満足せず、常に上を目指して努力できるようになりました。その経験が、僕の原点なのだと思います。これから生まれてくる子どもにも、そんな努力の大切さを伝えていきたいです。
——今後の目標をお願いします。
まずは、今シーズン成し遂げることができなかったBリーグのタイトルを獲得することです。チームとしてそこを最大の目標にしてきたので、来シーズンもチャレンジしていきたいです。また個人のキャリアとしては、5人制でもワールドカップやオリンピックに出場できるような選手になることが目標です。そうした僕の姿を見て、バスケ選手に憧れる子どもたちが増えてくれたら嬉しいですね。
チームとしての目標は達成できなかったものの、早くも来シーズンに目を向けているキング選手。また私生活では第一子誕生を控え、モチベーションは高まるばかり。Bリーグのタイトル獲得、日本代表の選出という目標を叶えることができれば、「努力することが大切」というお父さんの教えを証明することにもつながる。今夏のオフシーズンを経て、どんな成長した姿を見せてくれるのだろうか。文字通り“KING”を目指して、飛び立とうとしている。
TEXT:Kodai Wada PHOTO:Takaki Iwata EDIT:Yohsuke Watanabe(IN FOCUS)