ヴィッセル神戸を支えるチームスタッフたち。エキップってどんな仕事?
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プロスポーツの世界には、選手が競技に最大限集中できるよう、その活躍を陰ながら支えるスタッフがいる。普段は中々知ることのできない業務の内容、責任、そしてやりがい。ヴィッセル神戸でエキップ(エキップメントマネージャー)という役割を担う荒井琢也さんに話を聞いた。
―プロサッカーチームのマネージャーとはどんな役割を担っているんですか?
チームにもよりますが、ヴィッセル神戸のマネージャーの仕事は、遠征の手配、ウエアの管理、ドリンクや道具といった練習の準備など多岐にわたります。その中で、チームが円滑に進むようサポートをするマネージャーと呼ばれる役割の人と、僕のようなエキップ(エキップメントマネージャー)と呼ばれる、ユニフォームやスパイクの管理をする人とで2人ずつ分かれて作業をすることが多いです。僕らは試合用のスパイク磨きに加え、キーパーのグローブやレガース(すね当て)を手洗いします。僕はスパイクを担当し、もうひとりのエキップにはキーパーのグローブを担当してもらっていますね。スパイクは汚れを落とし、クリームを塗って磨く。やはりきれいなピカピカのスパイクで気持ちよく試合に臨んでもらいたいですから、手は抜けません。ちなみに練習用は選手本人に管理をしてもらっています。
―細かい作業も多いですし、練習の準備などに関しては選手が求めていることを先読みし、何が起こるのかを予測しながら行動していることが多いように感じます。
そうですね。そのため自分の中に、選手がスムーズに練習や試合に入れるような工夫や問題が起きたときの解決策など選択肢をたくさん持っておいて、様々なことに対応していきます。だからこそ準備がすべて。あらゆることを想定して何を求められてもいいように準備をしていく。もちろん想定外のことも起きるので臨機応変に対応していく力も必要です。
―どんな瞬間に、やりがいや喜びを感じますか?
日々感じていますが、特に嬉しいのは僕が磨いたスパイクを見て汰木康也選手がよく「すごくきれい!これで試合がんばれるわ!」と言ってくれるんです。頑張ってよかったなと思える瞬間ですね。
―選手から信頼されているのが伝わります。
選手との距離感は大事にしています。何気ない会話でも自分から話しかけて壁をなくしていく。信頼関係がないと本当に必要なことも言えなくなってしまいますから。勝つためにみんなでやっているわけですから、選手には100%の力で戦ってほしいですし、そのための環境作りも大切ですよね。ただ、近づきすぎるのも良くない。「言えばやってくれる」という関係性になるのはお互いにとって良くありませんから。ただ、その境界線は人によって違います。今でもそこは勉強ですね。
―Jリーグのトップを目指すチームですから、厳しい世界だと思います。ヴィッセル神戸に所属したことで得られたことはありますか?
プロのアスリートに関わる仕事に就けるというのは本当にありがたいことだと感じています。体のケアや食事、スパイクや靴下など本当に細かい部分にまでこだわる選手たちの姿を見たり考え方を聞くと、僕自身の仕事に置き換えて「もっとやらなきゃ」と自分を奮い立たせることができます。疲れてきて、ちょっと負けそうになったり、慣れてきて「このくらいでいいや」と思いそうになる時に、「ここで負けたらだめだ。彼らに見合う仕事をしないと」と。プロフェッショナルな人たちと関わっている以上、そこにレベルを合わせて自分も妥協することなくやらなくてはいけないと常々思っています。そのためにも日々勉強。他チームのマネージャーさんと情報交換をすることもありますし、現状に満足せず常に何がベストなのかを探っています。
INTERVIEW&TEXT:Chiharu Abe EDIT : Yohsuke Watanabe(IN FOCUS)