ヴィッセル神戸のトレーニング術をコンディショニングコーチに教えてもらおう!
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トップアスリートの体づくりはスポーツファンなら誰もが気になるもの。超人的なパフォーマンスを可能にするトレーニングのなかには、もしかするとわたしたちが参考にできるメニューもあるかも?ヴィッセル神戸でコンディショニングコーチを務める梅木暁さんに話を聞いてみよう。
――サッカー選手特有のトレーニングというのはありますか?
特有のものというのはないと思います。人間の体ですから、突き詰めていくとどのスポーツでも基本的にはやることはいっしょで、そこから枝葉が伸びていくイメージです。サッカー選手のトレーニングだからと言ってボールを蹴る、走るといった、プレーに近い動きをしないといけないというわけではないんです。より基本的な、一定時間パワーを発揮し続けられる体力が必要になりますから、軽い重りを持って素早い動きの中で力を出すようなメニューがメインになります。
――ヴィッセル神戸の選手たちがベースにしているトレーニングを教えてください。
体を動かしながら全身を連動させるファンクショナルトレーニングと呼ばれるようなものになります。これは重いダンベルを持って、鍛えたい筋肉にピンポイントで刺激を与えるものではありません。チューブやダンベル、バランスボールやメディシンボールなどさまざまな道具を使いながら体幹、下半身、上半身とまんべんなく刺激を与えるトレーニングになります。メニューはフィジカルコーチのトニさん(トニ・ヒル・プエルト)を中心に組み立てているのですが、ケガの予防にフォーカスした動きが中心です。
――ケガの予防には、どんなトレーニングが有効ですか?
複数の関節を大きく使いながらいろんな筋肉を連動させていくことが大切です。その際に重りやチューブを使用します。
――プロ選手が使用する器具は一般人でも扱えるものですか?
現状のプログラムだと、チューブは一般の方でも扱えるような強度だと思います。ダンベルに関しても、いまは重くて10キロ程度。メディシンボールも3~4キロくらいですから、普段から運動されている方であれば扱える重さになっています。選手たちは筋力が高いため、その分回数を増やし、軽い負荷で行っても息が上がります。読者の方がもし同じ重さを使ってトレーニングをする際には息が上がるくらいの回数で行うのが良いかもしれませんね。
――具体的な動きを教えてもらえますか?
特に重視している動きとしては、立った状態で足を前後に開き、バンドを使って腕を動かすもの。その際に、しっかり重心を落として体幹を使い、足の筋肉にも刺激を入れながら最終的に腕を使うようなイメージです。このようにひとつの筋肉だけを動かすということはなくて、体幹、上半身、下半身のすべてが連動するような形でプログラミングがされています。
――ヴィッセル神戸の中で特にトレーニングに力を入れている選手は?
山口蛍、酒井高徳、尾崎優成、山川哲史、それに前川黛也は個人で時間を作っていろいろと試しながら鍛えていますね。チーム全体で行うトレーニングのほかに、彼らのようにそれぞれが必要に応じておこなうトレーニングのメニューを組み立てる際には、選手個人の筋肉量や体脂肪量を考慮したうえで、さらにポジションの特性に合わせた鍛え方をしています。例えばサイドバックは上下運動も多く、スピードが重視されます。瞬時にダッシュし、ぴたっと止まる動きが多く、再びダッシュをするといった力強い動きが求められるので、ある程度重いダンベルを持って強い力が出るようなトレーニングをすることが多いですね。またフィジカルコンタクトも多いですから、それに耐えうる体も必要になります。逆に前線やフィジカルコンタクトが重要視されないポジションの選手は、もう少し負荷を軽くしたトレーニングを行うことが多いです。チームに求められているものやそれぞれ個人のニーズによって違いは出てきます。もしサッカーをしている学生がメニューを考える際には、いまの自分に必要な動きや筋肉量などを考えて、重さを増やすのか、回数を増やすのか決めてみてください。
INTERVIEW&TEXT:Chiharu Abe EDIT : Yohsuke Watanabe(IN FOCUS)