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WUBSに参加した主要4校が感じた「世界大会の必要性」とは

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日本人、ひいてはアジア出身の選手が世界を舞台に活躍している姿というのは心打つものがある。「ワールド・ユニバーシティー・バスケットボール・シリーズ(通称WUBS)」は、グローバルな舞台や感動を大学生を対象に創出しているひとつ。本記事では、8月に開催されたWUBS「Sun Chlorella presents World University Basketball Series」について、出場校である国立政治大学、白鷗大学、ラドフォード大学、東海大学それぞれからもらった大会に対するフィードバックを織り交ぜながら紹介していきたい。 

プロによる国内トップリーグの創設や積極的な海外バスケットボール留学、日本人NBAプレイヤーの輩出と、日本男子バスケットボールはいま大きな盛り上がりを見せている。しかし、それでもアジア圏のバスケットボールに対する世界的な評価はいまだ高くなく、今後さらに成長していくためにも“グローバルな経験値”が欠かせないことは周知の事実となっている。

そんな中でWUBSは、「アジアの大学バスケットボール界がより高みを目指すこと」を掲げ、日本発の“大学バスケットボールのチャンピオンズリーグ”を目指し、全日本大学バスケットボール連盟が主催、Rakuten Sportsが運営協力を行う形で2022年に創設された。8月10〜13日の4日間、国立代々木競技場 第二体育館で行われた第2回目となる「Sun Chlorella presents World University Basketball Series」には、世界各国・地域から王者や強豪チームが集い、第1回大会の2倍となる8校が参加した。東海大学(日本)、国立政治大学(チャイニーズ・タイペイ)、アテネオ・デ・マニラ大学(フィリピン)は2年連続の出場。高麗大学校(韓国)、シドニー大学(オーストラリア)、白鷗大学(日本)、ペルバナス・インスティテュート(インドネシア)、ラドフォード大学(アメリカ)の5校が初参加。アジア圏を中心にオーストラリア、アメリカの大学も加わることでより国際的な大会へと拡大したWUBSは、開催全日程を通じて会場に1万人近くを集客。ゲームごとに用意したハーフタイムショーも好評で、結果として昨年から250%以上の観客動員数を記録するなど周囲の期待を更新してみせた。

出場校の中で注目を集めたのは第1回WUBSチャンピオンであるフィリピンのアテネオ・デ・マニラ大学“BLUE EAGLES”。そして、バスケットボールの本場アメリカから参戦、全米最上位に位置するNCAAディビジョン1所属のラドフォード大学“HIGHLANDERS”。開催国のチームとして、インカレ(インターカレッジの略で全日本大学バスケットボール選手権大会のこと)出場の常連であり多くのBリーガーも輩出する日本屈指の強豪校白鷗大学“SOLDIERS”や、Bリーグ 2022-23シーズンにMVPを受賞するなど、昨今大活躍の河村勇輝選手(横浜ビー・コルセアーズ所属、楽天マネージメントアスリート)の出身校である名門、東海大学“SEAGULLS”(河村選手は2020年入学、2022年中退)に対する期待も高かった。しかし、それら注目校を抑えて第2回WUBSチャンピオンとなったのは、チャイニーズ・タイペイの国立政治大学“GRIFFINS”だった。

2017年に創設された若いチームながら、国立政治大学“GRIFFINS”は前年度3位という結果に見事リベンジを果たした。その背景についてチームは次のように答えた。

「昨年のWUBSでアテネオ、東海大学両チームに負けたことで、練習の質やディフェンス、フィジカル面など多くの課題を見つけることができた。今年はWUBSに向けて、スカウティングや対戦チームのプレイの分析はもちろん、オフシーズンも休暇を取ることなく他の国際大会にも出場するなど様々な準備を行ってきた。それがコーチの采配や選手のパフォーマンスに強く影響したと思う。チームの努力が報われる形となったことがとても嬉しい。我々の強みのひとつは、チームの1人ひとりがそれぞれの役割を全うしながらも一致団結していることであり、それが世界のトップの選手やチームに勝つことができた要因のひとつだと考える」。

また、同校は国際試合に対する感想についてこう述べる。

「各チームごとに強みや文化があり、世界中の多くのチームと対戦できたことがとてもいい経験になった。それぞれが周到な準備をしてきたのが伝わってきて、昨年と比べて参加校のレベルが上がっているように感じた。古いライバルであり、昨年も対戦した東海大学はスピード感のあるバスケットボールに加えて高いシュート力を備えていたし、ラドフォードはアメリカ仕込みのバスケットボールと空中戦での高い身体能力を見せてくれた。白鷗大学は攻守の切り替えや速攻が強く、フィジカルもスタミナもあり、さらに勝利への執念が素晴らしかった。WUBSに参加できたこと、素晴らしい大会を運営してくれたことに感謝している」。

決勝で国立政治大学に敗れて2位となった白鷗大学“SOLDIERS”監督の網野友雄氏は、世界のチームと対戦するこのWUBSで大きな財産を得たと話す。

「世界の強豪チームにどのくらい通用するのか楽しみにしていた初出場のWUBS。わたしからは『国際試合では必要以上に相手を大きくしないこと』と伝え、選手は物怖じせずに挑んでくれたと思う。自分たちのプレーが世界に通用する点も多く、粘り強く最後まで戦うことができた。しかし一方で、世界のチームは攻撃の起点の作り方、危険な場所の守り方、戦術への対応策などバスケットボールの原理原則をよく理解していると感じた。特にラドフォード大学は、ウォーミングアップから統率が取れており、基本に忠実で声もよく出ていた。改めて基礎が大事ということを認識させてくれたので見習いたい。WUBSは国際交流という面ではもちろんのこと、それぞれの国や地域のレベルや特色を知ることでバスケットボールを好きになる機会創出としても非常に有効な舞台だと思う」。

白鷗大学と同じく、日本からの出場校である東海大学“SEAGULLS”は初戦で国立政治大学に敗退。しかし後のゲームを無敗で勝ち上がり5位に浮上。2回目の出場となったWUBSについて「いろいろな国や地域の大学バスケットボールを見ることでさらに視野が広がった」と監督の陸川章氏は言う。また、「日本の学生や次世代のバスケットボール発展のためにもこのような経験がますます必要になるはず」と、実感をもとに世界大会の重要性を説く。

「今大会では高麗大学との一戦が特に印象深い。ここ数年、韓国でチャンピオンを取っている強豪で、高さやパワー、シュート力があり、どのポジションにおいてもミスマッチとなる大型チームとの対戦。そんなチームを相手に、失点を50点に抑えて勝利できたことは日本の中学・高校生に『サイズがなくても戦い方によって勝利できる』と、メッセージを送ることができたのではないかと感じている。世界を知ることや挑戦することが、今後の若者たちにとって海外挑戦や留学などを含めた大きな可能性を広げていくのだと思う。今回はアジアだけでなく、アメリカ、オーストラリアなど普段接することができないチームとゲームをしたり、見たりすることができ本当に幸せだった。益々、海外のチームともっとゲームを行い、さまざまなスタイルのバスケットを経験してみたいと強く思った。未来に向けての目標としては、欧米の同年代のチーム(大学、クラブチーム問わず)と海外に武者修行に出かけ、勝利していきたい。このような経験をさせてもらえたことに感謝している」。

最後は、準決勝で国立政治大学に敗れはしたものの、3位決定戦で前回チャンピオンのアテネオ・デ・マニラ大学に見事勝利したラドフォード大学“HIGHLANDERS”。本場アメリカに身を置くチームから見たWUBSはどのように映っているのだろうか。

「WUBSは8月に行われるバスケットボールのイベントの中でトップレベルになれる素質を持っていると感じた。JUBF(全日本大学バスケットボール連盟)と楽天を中心に完璧に運営されており、8チームによる対戦形式も面白く、選手やコーチは具体的な課題を見つけることができるだろう。わたしたちがアメリカからはじめて参加したチームであることは誇りであり、また新しい文化の体験としても非常に楽しむことができた。WUBSがアジアのみならず世界においてもさらに人気を高めていくことは間違いないと思う」。

また、今回経験した国際試合について、同校が所属するNCAAディビジョン1とWUBSで異なる“ショットクロック(チームがボールを確保してからシュートを打つまでの制限時間)”を用いながら「ゲーム展開の早さやスピード感」について感想を述べた。

「WUBSで対戦したチームは全員攻守の切り替えが早く、シュートの成否に関わらず積極的に前へボールを運んでいたのが印象的だった。ハーフコートを超えてからもボールを回すペースは早く、普段の練習やコーチングの質、チームメンバー間における信頼関係がオフェンスからだけでも見て取れた。加えて、NCAAでは体験しないような多種多様なゾーンディフェンスを見ることもできた。それらの理由として、FIBAで定められているショットクロックがNCAAディビジョン1と比べて短いことも関係していると思うが、若いメンバーが多い我々にとって、チームポゼッションが増えることで必然的に早くなる試合展開や慣れない形のディフェンスは非常に勉強になったと思うし、いいチャレンジだった」。

各校の詳しい成績はこちらから。

日本国内でもプロバスケットボール選手として活躍できる舞台が整い、本場アメリカへの挑戦も遠い夢の話ではなく現実となった現在。WUBSは選手と観客やコミュニティをつなぐ新たなプラットフォームとして、今後ますます高い熱量を帯びていくことだろう。アジア、特に日本のバスケットボール文化が、情熱や大志を抱く若者たちによってさらに開拓されていく過程をいっしょに楽しんでほしい。そこで得た感動が、多くの人にとって自信や勇気に変換されて、未来を切り開く原動力となるはずだから。

TEXT:Keisuke Honda EDIT : Yohsuke Watanabe(IN FOCUS)

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