アーティスト「OVER ALLs」。楽天スーパーナイターのライブペイント「FULL COUNT」に込めたメッセージ
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楽天スーパーナイターの開催当日、東京ドーム内ではアーティストのOVER ALLs(オーバーオールズ)がライブペイントを実施。試合開始から終了までという限られた時間の中でのパフォーマンスに多くの人はその場で立ち止まり、感嘆の声をあげた。 スポーツを通じて、人々や社会にとってもっといい未来を実現したい楽天の想いにOVER ALLsが賛同したことで制作・完成に至った今回のアート作品「FULL COUNT」に込めたものとは。OVER ALLs代表の赤澤岳人さん、画家の山本勇気さんそれぞれに話を聞いた。
― 『スポーツとともに、もっといい未来へ。』という楽天の想いからはじまった今回のパフォーマンスですが、OVER ALLsとしてどういったメッセージを込めましたか?
赤澤岳人(以下、赤澤)「世の中の状況がここ数年で大きく変化した今、なくても生きていけるものが実は大事だったということに多くの人が気づいたようにも感じています。特に、楽天の想いである『スポーツとともに、もっといい未来へ。』という中だと『スポーツとともに』の部分が重要なんじゃないかなと。僕たちはアートをやっているわけですが、スポーツにしてもアートにしても衣・食・住の観点において絶対に必要な存在というわけではありません。ですが、僕としては衣・食・住の『食』が『飾』に変わるようなイメージを持っているんです。これはアクセサリーなどで着飾るわけではなく、心を感動させることで自らの生活や人生が彩られていくという捉え方です。そういった意味でスポーツやアート、音楽などは重要な役割を持っていて、それらが世の中の中心になっていくことでもっといい未来につながっていくのではないかというように考えています」
山本勇気(以下、山本)「自分たちにできることは、頑張っている姿を見てもらうことで『かっこいいな』や『自分も頑張れそう』と感じてもらうことなんじゃないかなと思っています。僕自身、昔はどうやって絵描きになればいいのかわからなかったし、実際に描いているところを見る機会もありませんでした。でも、こうやって球場内でライブを行わせてもらえたことで絵とつながりが持てた子どもたちがたくさんいると思うんです。これをきっかけに絵描きになりたいと思ってくれたらもちろん嬉しいし、今回描いた田中・浅村両選手のようにプロ野球選手を目指してもいい。ひとつのことでも可能性はいろんな方向に広がっていることを知ってもらいたいです」
― 今回の作品のテーマは「FULL COUNT」。テーマに込めたメッセージを改めてお聞かせください。
赤澤「スポーツ選手に感じる未来ってなんだろうと考えたとき、常に真剣勝負の連続のなかでも、ここぞという場面で見せる眼光の鋭さが印象に強く残っていたんです。同時に、多くの人にとってもスポーツ観戦で感動するシーンとはそういった瞬間が多いのではないかと思い、そこに未来を切り開いていく力があるように感じたことが作品の土台になっています。今回は田中将大選手と浅村栄斗選手のまっすぐな眼差しを描くことで、閲覧者自身がボールのように見られている気持ちになるようなイメージで構図を考えました。「FULL COUNT」という言葉を選んだ理由ですが、投手にとっても打者にとってもどっちに転ぶかわからない緊張の一瞬をひと言で表すことができると思い、最終的にそう決めました」
― 今回の作品を描く上で意識したポイントはどこですか?
山本「人物画を描くときはいつも大事にしていることですが、やっぱり目ですね。特に今回はテーマ的にも眼差しの強さや鋭さから伝わるものを意識したので。構図も、両選手の片目ずつがボールとちょうど重なって見えるように描いています」
― 描いているときはどんなことを考えていましたか?
山本「試合がどうなってるのかなって(笑)。シンプルに応援していましたし、今自分が描いている人物が投げたり打っている状況にはなんとも言い表すことのできない感覚を覚えました」
― 作品の完成までおよそ4時間。表向きには一瞬のような出来事でしたが、実際ここへ至るまでどのような経緯があるのでしょうか?裏話的なエピソードがあれば聞かせていただきたいです。
赤澤「打ち合わせなどを含めると完成までの期間は2ヶ月間くらいです。今回に限らず、作品のテーマやコンセプトがすぐに決まるわけではないので、さまざまな案を出させてもらいながら最良を目指しています。今回の制作過程には『選手の高校生時代』や『子ども視点から見た選手の姿』なんていうコンセプトもありました。全部で20個近くあったんじゃないかな?それを山本と、あーでもないこうでもないって言いながらブラッシュアップしてきて完成に至っています」
― ライブペイントは完成された1枚の絵を観せるだけではなく、その過程も楽しめるような要素があるように感じました。そういった表現も意図されている部分ですか?
山本「そうですね。寄り道、というと言い方はちょっとアレですが、ストレートにこの絵を描く場合とライブペイントで描く場合では描き方が異なってきます。今回のケースでは最初に文字で分かりやすくテーマを伝えるところからスタートしたり、見せ場をいくつかに分けた工程を練りました。まぁ、その上から絵を描くので見えなくなってしまうんですけどね(笑)。それに、ライブペイントは結局のところ『ライブ』なので、すべてが計算済みということにならないところが描き手の自分にとって面白さを感じる部分でもあります」
― プロ野球選手が試合で戦うこととライブペイントは、フィールドは違えど同じ“ライブ”と言えると思います。シンパシーのようなものを感じたりはしますか?
山本「僕個人の感情としてはスポーツ選手やミュージシャンを羨ましく思うところがあるんです。絵って結構地味ですし、完成してから何回も観たり、ちょっと日が経ってからじわじわとくるもの。それに、今日のようにたくさんの人たちからお膳立てをいただくことでやっと実現することでもあるので、ライブと言ってもちょっと違いがあるように感じます。僕も絵を描いてあんな大きな歓声もらってみたいです(笑)」
赤澤「本当にそうだね(笑)。ただ、たしかに違いはあるように思いますが絵には絵の良さ、特に残せる力があるように感じます。スポーツや音楽は、もちろん観直すこともできますが基本的にはその瞬間が一番価値のあるとされています。今回の絵でいうと楽天イーグルスの本拠地である仙台に飾っていただけるそうなので、完成から時の経過を楽しむこともできるというのが絵の魅力のひとつなんじゃないかと思います」
― 「残されていく存在」ということは意識されている部分ですか?
山本「そうですね。すぐに消えていくようなものであってほしくはないですね」
赤澤「絵というのは、完成してしまえば残る残らないは観ていただく側に委ねる部分が大きかったりします。なのでOVER ALLsとしては自分本位に仕上げる作品ではなく、誰かの思いに寄り添うものづくりを続けています。今回でいうと、楽天の“A BETTER FUTURE TOGETHER”というメッセージを田中選手や浅村選手の姿を借りてどう表現するか、そして表現したものがその後もしっかりと伝わっていくかが大切なんです」
― 今後、OVER ALLsはどういった存在でありたいですか?
赤澤「日本国内だとアートというのはマニアックな方に注目しがちだったりするんです。でも僕たちがやりたいことはもっとポップなんですよね。音楽に例えると、デスメタルじゃなくてポップスとか、メロディックなパンクロックのようなもの。わかる人にだけわかればいいって考え方や、そういった表現に惹かれる傾向は僕自身にも少なからずありますが、OVER ALLsはそこを目指すのではなくて、いろんな人が聴いても心が『WOW!』となるものでありたいというのを意識し続けていきたいと思っています」
TEXT:Keisuke Honda PHOTO:Masato Ura
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代表取締役/CEOの赤澤岳人と副社長/画家の山本勇気を中心に活動するアート集団。2016年創業。オフィスアートを主体に数々のオーダーアートを企画・制作している。「楽しんだって、いい」を企業理念に掲げ、正解を追求する“HOW”ではなく心の感動に従う“WOW!”を追求。