「若い頃に挫折を経験し、どう乗り越えていくかが大事」。ヴィッセル神戸が誇るプレースキックの名手、初瀬亮が語る成長の軌跡。
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ディフェンダーながらも、積極的な攻撃参加と正確なキックでチャンスを演出する初瀬亮選手。その左脚から放たれるロングボールは、相手守備陣を脅かし、ヴィッセル神戸の攻撃の起点となっている。しかしながら、もともとは右利きであり、練習を重ねる中で左脚の精度も上がっていったという。日本屈指のプレースキッカーは、どのようにして育ったのか。初瀬選手の原点と、今シーズンのここまでの戦いを振り返ってもらった。
——初瀬選手は小学生の頃は右利きだったとのことですが、どのようにして両脚で高いレベルのキックができるようになったのでしょうか?
もともとは小学生の頃、中村俊輔さんに憧れていてプレーを真似していたんです。中村俊輔さんといえば左脚の芸術的なフリーキックが有名でしたから、必然的に僕も左脚を使うようになりました。また右利きの選手が多い中で左脚で蹴れたらカッコいいなという思いもあり、それからずっと左脚で練習していたらいつの間にか精度が上がっていきましたね。
——Jリーガーを夢見る子どもたちが、初瀬選手のような精度の高いキックを蹴るためには、どんな練習をすれば良いでしょうか?
やっぱり子どものうちはボールに触れる機会を増やすことが大事です。誰でも得意・不得意があるので必ずしも両脚のキックにこだわる必要はありません。日本代表の三笘選手のように右脚のインサイド・アウトサイド両方で高い精度を出すこともできるわけです。それぞれのスタイルに合ったやり方でいいのかなと。それでも、もし両脚で正確なキックが蹴りたいのであれば、やはりボールに触れる機会を増やして感覚を養うことが大事なんじゃないかなと思います。
——今年のヴィッセル神戸についても伺っていきます。シーズン終盤に差し掛かり、チームはどんな状態でしょうか?
シーズン前半は苦戦を強いられる場面もありましたが、後半は失点数が減り、勝ち点を積み重ねられるようになってきました。ディフェンダー陣としては優勝に向けて守りからチームを盛り上げていきたいなと思っています。
——ここまでの戦いを振り返り、初瀬選手個人としてうまくいった部分、課題に感じている部分をそれぞれ教えてください。
攻撃時のプレーは良くなっているのかなと思います。昨年よりも攻撃参加する機会が増えましたし、その分チャンスを作れるようになったなと感じます。課題という意味ではセットプレーでしょうか。接戦になる試合ほどセットプレーの重要度が増すので、フリーキックやコーナーキックから得点に絡む機会を増やしたいですね。
——ポジション争いが激しいチームの中で、自分の存在をアピールしていくために工夫していることはありますか?
自分の特徴を活かすことが大事なのかなと思います。僕の場合はキックの精度の高さが大きな武器なので、自分のキックからチャンスメイクができれば存在感を発揮できると考えています。またケガをせずコンスタントに試合に出続けることも大切。毎試合安定したパフォーマンスを出せれば、監督やコーチから“計算できる選手”として見てもらえます。神戸に来てから6年くらい経ちますがケガで休んだことはほとんどないので、そこも僕の強みだと思っています。
——良いコンディションを保つために、普段からどのようなことを意識していますか?
試合や練習が終わってからのケア・食事には気を使っています。練習後はクラブハウスで栄養満点の食事を摂ることができるので、そうしたところから体力の回復につながっているんだと思います。またヴィッセル神戸は経験豊富なベテラン選手も多いので、彼らからどうやったら長くプレーできるかを聞いて、自分の身体に取り入れています。
——楽天グループでは「スポーツとともに、もっと良い未来へ。」というスローガンを掲げています。未来を担っていく存在である子どもたちに向けて、憧れの先輩としていまどんなことを伝えたいですか?
失敗や挫折をした上で、それを乗り越える経験をしてほしいですね。僕はジュニア・ユース時代は決して、エリート選手ではありませんでした。練習はBチームでやることも多く、なかなか試合にも出られませんでした。ただ、そこで諦めずにしっかり継続してトレーニングできたからこそ成長できたと思いますし、試合に出られることの喜びを感じられるようになったと思います。思い通りにならない状況に対して言い訳をしても、成長はありません。前向きに、自らの意思で未来を切り拓ける人になっていってほしいですね。
——オフの過ごし方についても聞きたいのですが、休日はどんなことをしてリフレッシュしていますか?
最近はゴルフにハマっています。2023年くらいからはじめたのですが、サッカーとはまったく異なる身体の部位を使うスポーツなので、すごくいいリフレッシュになっています。オフの日はもっぱらゴルフに行くのですが、ヴィッセル神戸にはゴルフ好きの人が結構多いので、チームメイト同士のコミュニケーションという意味でもいい時間ですね。いまはベストスコアが81なので、早く70台を出したいです(笑)。
——最後に、今シーズンの目標を教えてください。
まずはJリーグ連覇に向けて1試合1試合を集中して戦っていきたいです。またアジアチャンピオンズリーグ(ACL)もはじまり、試合日程も厳しくなるのでチーム一丸となって優勝を目指します。
正確なキックをストロングポイントとしつつも、その土台となっているのはケガをしにくい身体だと話す初瀬選手。そしてそんな彼を支えるのは、ユース時代に挫折を乗り越えた経験でもある。トップレベルの技術を身につけるためには強い心が欠かせない。将来、サッカー選手を目指す子どもたちも挫けることなく明るい未来へ前向きに進んでいってほしい。
TEXT:Kodai Wada EDIT:Yohsuke Watanabe (IN FOCUS)