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MC MAMUSHIはいつでも“即興”スタイル。スポーツの熱狂をマイク1本に込めて

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テレビ番組や音楽のライブなどでよく目にする姿と同じように、スポーツの世界にも“MC(司会者)”がいる。アフロヘアにサングラスがトレードマークのMC MAMUSHIさんは、会場の盛り上げ役であり進行役でもあるMCの最前線にいる人。ストリートバスケからキャリアを積み上げ、いまや日本中が注目するビッグゲームの会場を沸かせるほどになったスポーツ界きっての人気MCに、スポーツの魅力や自身の役割を尋ねた。

MCもスポーツの一部。現場のさまざまな思いをひとつに

3on3形式によるストリートバスケを皮切りに、サッカー、野球といったメジャースポーツから、ダンス、BMX、スケートボード、ダブルダッチなどストリートと密接なカルチャー。ときにはセパタクローやちびっ子たちの50m走、なんて変化球な競技会場まで。さまざまな現場から厚い信頼を得ているMC MAMUSHIさんの目に、スポーツの魅力はどう映っているのだろう。

「スポーツの魅力ですよね、う〜ん……。即興を売りにしているMCにもかかわらず、いい返しがすぐに出てきません(笑)。というか、そうやって考えるまでもないくらい自然な距離にあったんだと思います。僕は幼い頃からスポーツが大好きでした。スポーツ推薦で進学したとか全国大会に出場したとか、そんな輝かしい経歴とは無縁の人間ですが、思い返してみると人生のいいパートも悪いパートもスポーツによって体感してきた気がします」

駒沢公園近くにあるスポーツウェアブランド、AKTR(アクター)のショップにて。

小学生から高校生までバスケ部に所属していたというMC MAMUSHIさんが、MCとして活動するようになったのはいまから20年ほど前のこと。デビューの場は、当時日本に浸透しはじめたばかりのストリートバスケのコートだった。「自分が好きなバスケットボールを盛り上げたい」。そんな熱い思いとは裏腹に、現場ではスベりまくり、声を張り上げすぎて喉を潰す日々が続いた。ちなみにその頃の国内ストリートバスケは黎明期にあたり、特にMCに関しては先人が切り開いた道もなければ、追う背中もないような時代。そんななか、トーク力や現場の仕切りの参考にしたのは、テレビ番組や音楽のパーティー現場など異なるフィールドで活躍する“しゃべりの達人たち”だった。彼らのことを注意深く観察し、MCのコツを少しずつ身体に染み込ませたMC MAMUSHIさん。こうして地道な努力を積み重ね、いまではバスケのみならず、あらゆるスポーツの現場から声がかかるほどのエンターテイナーへと成長した。

MC MAMUSHIさんがクリエイティブディレクションを務めるスポーツボールブランド、TACHIKARA(タチカラ)とAKTRがコラボしたバスケットボール。デザイン性抜群!

NBAとAKTRがコラボしたアパレルコレクション。“NBA TO KURASU”をテーマに、人気チームのロゴをオマージュしたデザインなど多彩なアイテムが揃う。

長いキャリアのなかでも大きな転機と言えるのは、「NBA Japan Games 2019 Presented by Rakuten」でのMC起用。NBAのゲームが日本で開催されるのは16年ぶりとあってその注目度は非常に高く、MC MAMUSHIさん自身も「当時の自分にとってMCキャリア史上最大最強のオファー」と語る。

「大規模なイベントでしたが大変さはまったくなくて。なぜなら、会場は盛り上がる気満々の観客で超満員。そういうときはMCがうまいことを言わなくても一体感が生まれるので、僕はそれをフォローしただけなんです」

「NBA Japan Games 2022 Presented by Rakuten & NISSAN」でMCパフォーマンス!

自分のMCがまるで些細な存在だったかのように言うが、そんなことはない。MC MAMUSHIさんのパフォーマンスを間近で見た本国NBAの関係者たちは、「キミはHype(イカした) MCだ」と賛辞を口にした。なにより、2022年に開催された「NBA Japan Games」のコート上に再びMC MAMUSHIさんの姿があったことが実力を物語っている。

そして、この「NBA Japan Games」での大役は次なるエポックメイキングを巻き起こすことに。3月15日(土)から19日(水)の間で4日間かけて行われた「MLB Tokyo Series presented by Guggenheim」。あのメジャーリーグチームのロサンゼルス・ドジャース対シカゴ・カブス戦のMCとして大抜擢された。

「持ち前のノリは生かしつつ、微力ながら大役を務めさせていただきました。みんなにとってメモリアルな場なので台無しにしたくない気持ちは強くありましたね。大舞台だからこそ、気持ちを丁寧に汲み取りながらパフォーマンスする必要があるんです。ただ実際には自分も、このシリーズ観戦に東京ドームに集まった何十万人のベースボールファンと同様に楽しみながらMCができました。それに、とにかく楽しみたいという欲求が集まった現場が大好きで得意なんだなと再認識できる機会になりました。盛り上がってくれた観客のみなさんに感謝ですね」

数々の現場を経験し、腕に磨きをかけてきたMC MAMUSHIさん。そんな彼がMCをやるうえで大切にしているのは、「だれもが理解できる言葉でその場にある感情を伝える」こと。ちなみに、MC MAMUSHIさんが繰り出す言葉の数々はすべて即興。現場で渡される台本には必要最低限のことしか記されていないにもかかわらず、いま欲しい言葉を的確に投げかけてくる。「MCのときに出てくる言葉は日々の蓄積だと思っていて。人はどんな言葉に感動するのか、なにを目にしたら心が揺さぶられるのか。そんなことを日常的に考えるようにしています。ただただやかましく、なにを言ってるのかよくわからない自分本位なMCは、多くの人にとって腹立たしい存在ってことは痛いほど理解しているつもりなので(笑)」

観客の心を鼓舞させるアツい言葉を操る一方で、MCとは常に俯瞰者であり、冷静な視点も不可欠。「僕が立つ現場は基本、試合やイベントの主催者、プレーヤー、観客という3者構造で成り立っています」とMC MAMUSHIさんが話すように、会場にいる人々にはそれぞれの立場があり、抱く感情も異なる。

「彼らの感情をその都度代弁していくわけですが、あちこちに対していい顔をすると多重人格的なMCになってしまい、会場のムードが一体にならないんです。だからひとつの人格として自立していなければなりません。MCって、はたから見れば隅っこでちょろちょろやっているような小さな存在ですよね。でもスポーツもイベントもさまざまなロール(配役)があって成り立つもの。そう考えるならば、MCもスポーツやカルチャーの一部と言えます。スポーツにかかわっているみんなと同じように、僕もスポーツを愛していて、いいものだと信じていますから。MCにはスポーツの魅力や可能性を広げていく役割がきっとある。そのうちのひとりを担いたいし、僕のような発想のMCにおもしろさを感じて背中を追ってくれる子が現れてくれたら、スポーツに貢献できているようで嬉しいですよね」

インタビューの最後に、MC MAMUSHIさんは中国の広州で見かけたバスケットボーラーの話をしてくれた。

「以前、大きな広場の近くをふらっと歩いていたら、バスケコートのハーフラインからひとりでシュート練習をしているおじいちゃんがいたんです。もちろん著名な選手じゃありませんが、ひたむきにシュートを打っていて。シュートが外れる度に遠くまでボールを拾いにいき、またハーフラインまで戻ってシュートを打って……、そうやって何度も繰り返している光景を10分ぐらい眺め続けていました。僕が思うに、超一流の3Pシューターとして知られているゴールデンステート ウォリアーズのステフィン・カリーも、そのおじいちゃんも、同じくらいすごいプレーヤー。そういうことって世界中に溢れていると思うんです」

プロ選手の卓越した技術を伝えるだけではなく、路上のプレーヤーの尊さもMCを通じて昇華していきたい。カルチャーをこよなく愛する、MC MAMUSHIさん流のMCはこれからもあらゆる現場に響き渡る。

TEXT:Keisuke Honda
PHOTO:Takaki Iwata
EDIT:Yohsuke Watanabe, Shiori Saeki (IN FOCUS)

  • MC MAMUSHI

    バスケットボールシーンを中心に、あらゆるスポーツ・イベントのMCとして活躍。日本発のスポーツボールブランド「TACHIKARA(タチカラ)」のクリエイティブディレクターも務める。

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