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「替えが利かない選手になりたい」。小郷裕哉の放った言葉がいよいよ現実になってきていることを、楽天イーグルスのファンは知っている。

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ハツラツとしたプレーと勝負強い打撃。今年のセ・パ交流戦での2本塁打、12打点という活躍も記憶に残る、楽天イーグルスの小郷裕哉選手を知っている?これから数年のチームを牽引していくであろうこの外野手の強さはきっと、積み重ねてきた努力と、ポジションを譲らんとする強い意志からきている。そのひたむきさに、応援するわたしたちもつい"アツく"なってしまうのだ。

ファンの声援が力に

プロ5年目の昨季、120試合に出場し10本塁打をマークするなど開花の芽を見せていた小郷選手がついにその時を迎えた。今季、熾烈な外野手争いを勝ち抜き、スタメンで出場を続け9月に入ってもなお、全試合フルイニング出場を続けている。一番打者として打線の火付け役となるだけではなく、得点圏打率は.311(9月4日時点)とその勝負強さで何度もチームを勝利に導いてきた。さらに同日現在で延長戦での打率が.364とチャンスの場面や勝敗が大きく関わる延長戦など、プレッシャーのかかる場面でこそ力を発揮。打席に向かう背中は大きく頼もしく輝いている。

「試合が終盤になってくるとより集中力が高まるんです。チャンスの場面や延長戦では大きな声援をいただけるので、自分が持っている以上の集中力が出るような気がします。その(声援の)影響が大きいと思いますね」。

存在感を見せつけたのがセ・パ交流戦だった。6月5日の阪神戦(甲子園)で1点ビハインドの9回二死から起死回生の逆転2ランで勝利に貢献し、11日の巨人戦(楽天モバイルパーク宮城)ではサヨナラ打を放ってチームを勝利に導いた。この1勝が大きく影響し、球団初の交流戦優勝を果たすなど、小郷選手は今やチームに欠かせない存在となっている。

替えが利かない選手へ

入団から4年間は二軍で練習に励みながら一軍を狙う立場だった。レギュラーのポジションが確立していない選手はまずは二軍で結果を残しアピールすることが必要。だがそれでも誰かが調子を落とした時、またはケガをしたタイミングで一軍に呼ばれて出場機会を得ることがほとんど。一軍に出るにはそういった隙を逃さずに結果を残すことが求められる。実際、昨季の小郷選手は途中出場での打率が.417とチャンスで結果を残してきた。逆に言えば、「隙を見せれば奪われる」、レギュラーを守り切るためにも隙を見せたくないというその危機感が彼を奮い立たせているのだろう。

苦しい時期を経験したからこその反骨心とレギュラーへのただならぬ思いが今季の活躍につながったとも言える。疲労がたまる8月に入り、打てない時期を経験。それでも今江敏晃監督からは「スタメンから外すことは考えていない」と絶大な信頼を得ている。自身もこの状況を打破し、チームの勝利に貢献したいと誓う。さらに、この経験が来年以降にも必ず生かされると前向きに捉え、課題克服に取り組んでいる。

「替えが利かない選手になりたいと思っています。プレーだけじゃなくて、僕の存在というか、人間的にも。結果や成績はもちろんですが、それ以外の部分でも必要不可欠な存在になりたい。そのためにも常にポジティブで、あまり下を向かないようにはしていますね」。

小郷選手の成長がチームの成長に

プロ6年目の28歳はチームの中では中堅選手。責任感は自然と増してきているが、まだそのポジションを勝ち取ったとは言い切れない。そこを確かなものにするためにも来年以降の活躍がより重要になる。だからこそいまは自分ができることに全力を尽くしている。

昨季よりも大きく伸ばした数字がある。それがもう一つの武器である足。昨季13だった盗塁数は9月4日時点でリーグ3位の25。成功率は.833をマークしている。

「今年に入り、絶対にセーフになれると思った時しか走らないようになりました。盗塁はアウトになったら意味がない作戦なので。それが気持ちの余裕につながっているのかなと思います」。

ヒットや四球で出塁しても、盗塁でアウトになれば出塁していないことと同じと考え、盗塁の数ではなく、成功率に重点を置いた。ランナーとして塁にいるときも冷静に投手を観察できるようになったと言い、その割り切りが、結果的に好成績につながっている。

加えて四球数もリーグ2位タイの52。一番打者として試合開始早々にチャンスメークする小郷選手は相手バッテリーにとっては非常に嫌な打者となった。それが攻撃に欠かせない選手となった一番の要因だろう。

「レギュラーで出ている以上、上位チームのレギュラー選手よりも成績を出さなければチームは上にいけない。まだまだです」。

自覚が芽生えはじめた背番号51の成長がチームの順位を押し上げる。これからの楽天イーグルスを担う存在であることは間違いないが、まだまだ進化の途中。今季の活躍はきっと序章に過ぎない。もっともっとスタンドを沸かせる好打者になってくれるだろう。

TEXT:Chiharu Abe
EDIT:Yohsuke Watanabe(IN FOCUS), Shiori Saeki(IN FOCUS)

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